二人のデートはショッピングモールに場所を移していた。
「僕、あの店ちょっと見てくるね」ホビーショップの前で息子が言った
「それじゃママ、あのドラッグストアにいるね」母は息子を見送るとドラッグストアの奥に入っていった。妊娠検査薬のコーナーに近づくと、あの香りがした。内藤夫人の香水と同じと思い、前を見ると、妊娠検査薬を手にした内藤久美子の姿があった
「あら、中野さん」久美子の笑顔が勝ち誇ったように見えるのは気のせいだろうか…、美佐子はすぐに言葉が出てこなかった
「何を探してるの?」手に取った妊娠検査薬を隠すことなく久美子が聞いた
「わたしも、その」妊娠検査薬を手に取る美佐子、しばし無言の時が流れた
「排卵日から3週間後くらいからか…」注意書きをあえて小声で読み上げる久美子
「おめでたですか?」美佐子が聞いた
「そんな、あのやはり知識として知っていたほうがいいかな~って」つくろう久美子
「そうですよね」作り笑顔で検査薬を棚に戻す美佐子、
「それじゃ、息子が外で待ってますので」
「息子さんによろしく言ってください」ふたりは別れた
「ママ、何も買わなかったの?」息子が外で待っていた
「うん、美咲ちゃんのママと会ってちょっと話していたの」
「へえ~、偶然だね、ねえごはん何にする?」息子の関心はランチに移っていた
「ステーキがいいんでしょ」微笑む母
「やった~」歩き出す二人、だが母は息子が遅れて店を出てきた久美子とアイコンタクトを取ったことを見逃さなかった…
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