柔らかな日差しが降り注ぐ日曜日、母と息子はアザレアの花が咲き乱れる公園を散歩していた。
「ママこの公園好きだよね」
「そうね、あなたが小さい頃ベビーカーを押してよくここに来たの、花を見るとママは心が和んで、ノンにも花を愛する男の子になってもらいたいな~なんて思ってた」腕を組み、仲良く歩く母子、その姿は恋人同士のようにも見える。
「あなた、ここからの眺めが素敵」
「ああ、いいね」公園の高台からアゼレアの花が咲き乱れる花壇を見渡しながら、高田裕介と妻の美智子は写真を撮っていた。
「あのカップルいちゃいちゃして羨ましい」美智子が遠くのカップルを見て言った
「そうだね、素敵だ、一枚撮らせてもらおう」裕介はカメラを構え撮影した。
「あれ」裕介はさらにズーム撮影する
「美佐子さんとノンくんだよ」
「えっ、そうなの」美智子が目を凝らした
「声かけた方がいいかな」裕介は妻に尋ねた
「せっかく親子水入らずなんだからよしましょう」美智子は夫の腕を取った
「それじゃ、最後にもう一枚、二人の幸せそうな笑顔をっと」ズームで二人の幸せそうな笑顔を裕介は撮影して、公園を後にした
美佐子と貴教の20メートル後ろを一人の女性が歩いていた。美しい姿勢で歩く女性は貴教がトイレに入り、一人で花の香を楽しんでいる美佐子に声をかけた
「ちょっとよろしいですか」
「はい」志佐子の微笑みは幸せに満ちて、美しかった
「あの、わたし埼玉県警の中山と申します」中山と名乗った若い女子はハンドバッグの中で警察手帳をかざした
「はい、何か?」美佐子の顔からは何も疑念を感じられない
「今、デートされてる男性はまだ中学生くらいですよね、あの条例をご存じでしょうか」
「あっ、もしかして、恋人のように見えました?」
「ええ、とっても仲睦まじく」
「ごめんなさい、息子なんです。そうですよね、中学生の男子が母親と腕を組んで公園を歩くなんてあまり聞きませんものね」
「ええ、息子さんですか~」私服の婦警の声が裏返っていた
「ママ~、ハンカチ~」トイレから出て洗った手がまだ濡れている少年が走ってきた
「こんにちは」屈託のない笑顔の美少年は母親と確かに目元がそっくりだった
「こんにちは、それではお母さま、ごきげんよう」職業病なのか、私服の婦警は敬礼をしてその場を立ち去った
「ママ、知り合い?」
「んん~、ノンとママがちょっといちゃいちゃしすぎだって注意してくれたの」
「ふ~ん」少年は母の言葉の意味が理解できなかった。幸せそうな母子に背を向け、足早にその場を立ち去る中山婦警は3か月後、冷たくなった二人と再会することになるのだが…
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