「いらっしゃい」玄関を開け美佐子が高田夫妻を迎えた
「ご無沙汰しております」裕介が挨拶をする
「姉さんなかなか来れなくてごめんね」マタニティドレスの美智子が明るく言った。美しい姉妹に裕介も笑顔がこぼれる。特に美佐子からは艶めいた色香を感じる。半年前、成田のホテルのカフェで夫の頬を平手打ちしたのを探偵から聞いている。夫の浮気で離婚寸前の主婦がこれほど美しいとは…、
「美佐子さん、私はここで、それからこれは貴教くんと召し上がってください」裕介は手土産を差し出した
「すいません、裕介さんお忙しいのに、ありがたくいただきます」貴教の好物のお菓子を受け取り。貴教はあまり裕介とは会おうとはしないが、この土産は喜ぶのだ。
裕介は中野家を出ると、住宅街のはずれの公園に車を泊め、探偵から聞いていた内藤家に向かって歩いた。歩きながら美佐子の美しさ、艶めかしさの意味を考えていた
「明らかに彼女の意識する相手がいるはず…、妹いや、妹に自分の美しさを見せつけ…、やはり息子、貴教を意識している…、妹に奪われまいとして」そう結論に至ったところで内藤家の前に到着した。主は大学教授と探偵から聞いていた。不動産会社を経営する裕介は建物を値踏みしながら、表札を見た。そこには「内藤修二、久美子、美咲、美波」とあった。
「久美子…、裕太の…」息子が中学の時に問題を起こした女生徒の名前を思い出した。息子が生きていれば40歳、相手の女学生は幸せになってくれているだろうか…
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