12月の中旬の土曜日、貴教と叔母の美智子は大宮から新幹線に乗った。昼近くだが目的地の仙台で昼食をとる予定なので、サンドイッチと温かい飲み物を買って二人掛けの指定席に座った。出発前に美智子はバックからひざ掛けを取り出して二人の膝の上にかけた。
「お姉ちゃん、僕そんなに寒くないよ」小さいころから姉のように美智子を慕っている貴教は無邪気に言った。
「わたしが必要なの、だってノン、すぐ恥ずかしがるんだもん」そう言ってひざ掛けの下から手を伸ばし、貴教の手を握った。ノンというニックネームは美智子がつけたものだ。
「お姉ちゃん」手を振りほどこうとする貴教、だが美智子は手を離さない
「ノン、お姉ちゃんの手、冷たいでしょ、温めて」そう言われると貴教は抵抗出来なかった。美智子が結婚するまでは貴教から握ることが多かった。しかし、美智子の結婚と同時に二人が手をつなぐことはなくなっていた。
地元の中堅不動産会社に就職した美智子はその美貌を生かしたセールスで営業実績を積み重ねて行った。だがその会社に存続の危機とも思われる出来事が立て続けに起こった。跡継ぎとされていた一人息子が趣味の登山中に滑落事故で命を落とした。その翌年、社長の奥さんがガンで亡くなった。失意の社長を慰め、会社を立て直したのが、まだ30歳になったばかりの美智子だったのだ。そして、仕事オンリーだった美智子は社長の求めに応じて後妻となったのだ。
「はい、あ~ん」美智子が一口かじったサンドイッチを貴教の口元まで運ぶ
「お姉ちゃん、恥ずかしいよ」車内はほぼ満員だった
「もう、ノンったらお姉ちゃんなんだから平気じゃない」
「もう~」貴教は仕方なくサンドイッチを口にした
「ああ、ほっぺに着いちゃった」頬についたマヨネーズを美智子が舌で舐め取ろうとすると
「んん~」後ろの席から年配の女性の咳払いが聞こえた
二人は仙台に到着するとまずは駅前の牛タン専門店でランチを堪能した。中途半端な時間なので店は比較的空いていたいて並ばずにすんだ。
「おいしかったね」店を出ると貴教が笑顔で言った。
「そうね、ノンが喜んでくれるとお姉ちゃん嬉しい」そう言うと美智子は手をつないだ。しかも恋人つなぎだ
「お姉ちゃん」人目を気にする貴教
「ちょっとはお姉ちゃんにもご褒美ちょうだい。ノン」美智子は笑顔でアーケード街を歩き始めた。貴教の手をしっかりつないだまま…
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