それぞれの土曜日がやって来た。すがすがしい初夏を感じる朝、内藤家の父と母そして妹は一泊旅行に出かけた
「みんな出かけたよ」美咲からメッセージが届いた
「了解、これから家を出る」貴教がメッセージを返信するとすぐに
「待ってる、早く会いたい」と返信があった
「おお~、愛されてるね~」母は息子の肩を叩いた
「もう~」息子は頬を膨らませた
「ママこそしっかりね」わざと明るくふるまう母に息子はエールを送った。
午前九時、貴教は家を出た。その100メートル後を歩く人物がいた。高田裕介が雇った探偵だった。裕介は何度か中野家の身辺調査を依頼していた。それは裕介がパリへ撮影旅行に出かけたのがきっかけだった。シャンゼリゼ通りで凱旋門を撮影しているときだった。通りを歩く日本人男性とフランス人の若い女性が腕を組んでるのを見て裕介はシャッターを切った。仲睦まじい二人とパリの美しい街並みが気に入って日本に帰ってから旅の思い出として、妻の美智子に見せた。すると美智子は
「巧さんじゃない、義理の兄の巧さん、フランスに単身赴任してる!」
「人違いじゃないか?」妻の慌てようにとまどう裕介
「だって、この時計、ノンが小学校卒業の時にパパとママにっておそろいでプレゼントした時計だもん。わたし買い物に付き合ったあげたから覚えてるの。限定ものだからそれほど出回ってないはず」確かに写真の男性は特徴的な腕時計をしていた。
「それにこの女の子、高校生くらいだけど、やせ型だから、お腹が出てるの目立つわ」
「えっ?」裕介は写真を凝視した
「妊娠してるってことか?」妻を見つめると、ゆっくりとうなずいた。
「ノン出かけたわ」姉の美佐子からメッセージが届いた
「あなた、お願いします」美智子は夫の裕介の運転で中野家を訪れることになっていた。姉は息子を気遣って出かけた後に来てほしいと事前に伝えていた
「N、自宅から300メートルのGFの家に到着」裕介に探偵からメッセージが届いていた。貴教がガールフレンドの家に着いたのだ。裕介と美智子は車で30分の所にある中野家に向かった
内藤家のチャイムを鳴らすとすぐに美咲が迎え入れてくれた。淡いピンクのブラウスにおそろいのカラーのミニスカート姿だ。広めの玄関ホールで貴教は立ち止った
「すごく可愛い」素直に口にした
「ありがとう」少し照れながら美咲は貴教を見つめた
「見てばっかりじゃなくて、早く~」美咲が貴教の腕に触れた
「うん」貴教は美咲を抱き寄せ、口唇を重ねた…
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