「それじゃ、おばさん失礼します」本を借りると貴教は玄関で靴を履き、声を張り上げた
「ええ~、もう帰っちゃうの~」奥から久美子が姿を現し、駆け寄ってきた。エプロンを外し、ブラウスとスカートに着替えていた。メイクも整えていた
「口唇の色、可愛いですね」貴教が褒めると久美子は乙女のように照れながら
「この間も褒めてくれたでしょ、おばさん嬉しくて、また来てね」久美子は両手で貴教の右手を握った
「ええ、毎日ここ通ってますから、是非」
「美咲がいないときでも遠慮しなくていいからね」
「もう、ママ~、いい加減に手、離したら」美咲がふてくされていた
「ああ、そうだ、この間、叔母さん見かけたわ、隣町のショッピングモールで」若い男の手を離すまいと久美子は話を続けた
「ええ、ベビー用品買っていたみたい。少しふっくらした感じだけど、相変わらずすっごい美人よね~、おめでたかしら」
「ベビー用品ですか…」
「おばさんももう一人くらい産んでもいいかな~」
「もう、ママ、いい加減にしてよ」ものすごい剣幕で美咲が母の手を振り払った。久美子は笑顔で軽く舌を出した。少し離れたところで美波が様子をうかがっていた。
玄関の外までは美咲だけが貴教を送った。
「ごめんね、じゃまが入って」
「いいよ、ふたりとも楽しいし。将来家族になるかもしれないから」
「そうね…、それじゃ、またね」美咲は頬を染めていた
貴教は女性を褒めることを覚えたのは叔母の美智子の影響だった。母の美佐子と5つ年の離れた叔母を貴教は姉のように慕っていた。その叔母が3年前結婚した時、少年は失恋したような気分だった。元気の無い貴教に気づいて何かと声をかけてきたのが美咲だった。家が近所で、小学校の頃、同じ空手の道場に通っていた。組手の対戦では美咲の方が圧倒的に強かった。そんな貴教を弟のように美咲は可愛がり、やがて二人の間に恋愛感情が生まれたのだ。
昨年の12月、叔母の美智子が貴教が受験になる前に旅行に連れていきたいと行った。場所は仙台、街がイルミネーションに包まれるのを見せてあげたいと言うのだ。母の美佐子はしぶしぶ承知した。愛してやまない貴教を取られてしまいそうな気がしたのだ。それでも美佐子は夫とある話をしなければならなかった。その場に貴教を同席させたくなかったことも手伝い、二人の旅行を認めたのだ。
旅先の夜、33歳の叔母と13歳の少年は過ちを犯してしまった…
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