「ママ、そう言えば美咲のママが言ってたんだけど…」テーブルにティーカップを置いていると二階から貴教が着替えを済ませて降りてきた。
「ノン、似合う~、かっこいい」二人で一緒に買い物に行き選んだボタンダウンのシャツにスリムのストレッチパンツに着替えた息子にティーカップを持ったまましばし見とれていた
「だから、美咲のママがね、美智子叔母さんおめでたじゃないかって言ってたよ」その言葉に美佐子は手にしていティーカップを床に落としてしまい、割ってしまった
「あらら、もう今日の主役なんだから気をつけてね」貴教は母の足元に広がったティーカップの破片と拾いはじめた
「ノン、ごめんね」
「いいよ」息子の優しさに胸が熱くなり、立ち上がろうとするところを抱きしめた
「ママ危ないから」息子は美佐子の気持ちを知ってか知らずかするりとすり抜け、割れ物用のゴミ箱にティーカップの破片を捨てた
「ねえ、パパの分のカップもう一個あったよね」
「えっ!」母のあまりの驚きように貴教はたじろいだ
「ママ、驚きすぎ」息子の笑顔に救われる
「いい匂い」貴教からコロンの香りが漂っていた
「ママが買ってくれたやつだよ、美咲のママがついたままじゃいやなんでしょ」息子の気遣いが嬉しくて胸に飛び込んだ
「どうしたのママ、ちょっと変だよ、それに僕にべたべたしすぎ~」笑い飛ばす息子に少し切なくなった。
「そうね、ケーキ出すから手伝って」
「うん」美佐子は息子への思いを胸の奥にしまい込み、母の笑顔を作った
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