彼女の呟いた言葉に、藤井くんの心は激しく動かされた。確かに彼は他のクラスメイトとは違い、あからさまに彼女へのイジメをしたことはない。
ただ、やはり心の中では『正子はブス。こいつは汚いもの。』と思っていたのは事実。そこは他の連中とは何も変わらなかったのだ。
次の日の放課後も、彼はこの部屋へと足を運んでいる。そこには生活指導の先生、そしてもう一人の下級生の女子問題児もいた。
そこで彼は、先生代わりに彼女達に勉強を教えている。『アホの正子の胸を揉んでやろう。』と考えてやって来たはずの彼だったが、思いとどまったようだ。
そして、彼はこう思う。『アホでブスで何も出来ない人形のようなヤツだと思っていたが、ちゃんと人並みの感情を持っていたんだ。』と。
義務教育を終えた正子。能力的にも高校への進学は、身請けをした叔母が思いとどまった。彼女は中卒での就職を果たすことになる。
そう決まったことで、残念ながら高校の卒業アルバムを彼女は手にすることが出来ないということになったのだ。
働き始めた先は、安価なホテルの清掃係。そこで働いていた叔母のコネだった。叔母はオーナーに事情を説明をし、常に二人でのシフトをお願いをしたのです。
仕事覚えの悪かった彼女でしたが、2年もすれば人並みの働きが出来るようにもなります。周りはおばさんばかりで、彼女を虐める者はいません。
それまでが嘘のような生活が訪れました。無口だったはずの口からは言葉が、無表情だった顔には笑顔も見られます。
そして17歳になると、その容姿にも変化が見られるのです。肩までしかなかった髪は伸び、背中にまで達しました。
伸びた前髪は垂らされ、醜いと言われる顔を僅かに隠します。
その顔には叔母から教わった化粧を施し、それなりのオシャレにも挑戦をするようにもなっていたのです。そして、そんな彼女を見詰める男が現れます。
このホテルに、彼女より2年遅れて就職をしてきた『木田』という男。年齢は28歳。正子よりも11歳年上でした。
妻と幼い子供がいながら、正子に目をつけてしまいます。それなりのオシャレだけではなく、彼女もそれなりに『女の色気』を出す年頃になっていたのです。
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