ソファに座った直後に比べて姉の表情はあきらかに変わっていた。
私に向けられていた敵意にも似た感情はすっかり薄れ、メスの顔が見え隠れしていた。
ここで私は敢えて席を立ちテーブルを片付けはじめ、残ったツマミやグラスをまとめて持ってキッチンに行き、皿やグラスを洗い出した。
ひととおり洗い終えてから新しいグラスを2つ用意し、ひとつにはただの水、もうひとつにはワインを注いで姉の元へ持って行った。
「さてと…。オレ今から風呂行くけど、これ、水とワイン。2つあるけど、水を飲んだらそのまま寝る。ワイン飲んだらオレにやられる」
〔…………え?〕
「ねぇちゃんが決めて。風呂からあがってみて、ねぇちゃんが飲んでた方が答えってことでね」
〔なんで……〕
「水だったらオレもそのまま寝る。ワインだったら……布団で裸になってて。じゃオレ風呂行くわ」
正直どっちでもよかった。
どっちだったとしても私は寝るつもりでいた。
飲んでいたため風呂には浸からずシャワーだけで済ませ、風呂を洗ってからあがった。
パンツだけ履いてリビングに戻ると姉の姿はなく、2つのグラスは両方とも空になっていた。
姉は自分で決めず私に丸投げした。
1階奥の和室で布団にくるまっているであろう姉は、どんな気持ちでいるのか……まぁワインも飲んだわけだし私を拒んでいない事は確かだった。
でも残念ながら、私は和室には行かずそのまま自分の寝室にあがって眠った。
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