〈………チ…ウ……〉
それまでずっと黙っていた娘がぽつりと呟く。
はっきり聞き取れず少しだけ顔を娘に向けた。
「……ん?」
〈ちがう……そうじゃなくて……〉
「ん?……じゃなくて?」
〈……あの…ね………〉
「うん?」
〈あの……コハルね………パパに…気づいて…ほしくて………〉
「………気づいて?……??」
〈コハルが………パパ好きなこと……〉
「うん。……それは知ってるよ。パパもコハル大好きだからね。」
〈……そうじゃなくて……〉
「うん??」
ココアの入ったカップをカリカリと爪で引っ掻きながら頬を赤く染めた娘は、消え入りそうな声を絞るように続けた。
〈…パパを…パパの事をね……男の人として……好き…なの……〉
「…………ぇ?」
それまでの人生で数えるくらいしか聞いた覚えのない、自分を好きだという突然の告白はすぐに理解は出来ずにいた。
しかもそれが自分の娘の口から発せられた事でさらに混乱していた。
娘の言葉に返す言葉が見つからず、ポカンと口をあけて固まっていると、沈黙に耐えかねた娘が口をひらいた。
〈……ゴメンナサイ………〉
「いや…えーと……ちょっと待ってな…えーと……」
しどろもどろで慌てる私を、娘はいまにも溢れそうな涙を浮かべた目で見つめてきた。
それを見て私は娘の頬に手を伸ばしていた。
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