何を頼んでも旨いツマミのおかげで酒も進みほろ酔いになった頃、彼女はすでに出来上がっていた。
『みっくん!楽しいね~!アハハ!久しぶりにこんなに飲んじゃった~!アハハハ!』
「お嬢…飲み過ぎじゃないか?」
『お嬢はやめて~!そんな歳じゃないし~!』
「まぁ…そだな。…ってかオレと飲んでて旦那さんは何も言わんの?」
『え?旦那?アハハ!別れたも~ん!』
「は??なんでよ?」
『聞く?それ聞いちゃう~?アハハ~!』
酒でご機嫌になった彼女は陽気に見えたが、別れた経緯を話していくうちに一気に雰囲気が変わっていった。
下がっていた目尻が徐々に元に戻り、代わりに眉間に皺がより始めた。
『私……DV受けてた』
陽気だった彼女は急に悲しそうな表情になった。
私も酔ってはいたが彼女のただならぬ雰囲気を感じ、場所を変えようと会計を済ませて店を出た。
歩いて3分ほどの場所に昔通っていたバーがあったのでそこに移動して話の続きを聞いた。
彼女曰く、旦那は外面はものすごくいいが、家では真逆の人間だったらしい。
亭主関白を通り越して王様レベルの男で、彼女は奴隷並みの扱いを受けていたとの事だった。
聞き役に徹して、洗いざらい話してみてと促すと、とても夫婦とは思えない内容だった。
金は不自由なかったが、それ以外はまったく自由がなく正に飼われているようなものだったらしく、再会した時の明るさからは想像できなかった。
『私ね、……100人近くの人相手にしてきた……』
彼女は両手でグラスを挟んで言った。
「え?……どーゆーこと?」
『………旦那が…連れてきた男の相手させられた…』
「………えっと……それって…」
『性処理に使われてた。旦那の…取引先とか…』
「マジか……。」
『………ゴメンね……こんな事話されても困るよね。』
「いや……でも別れたんだよね?」
『うん。……やっと…解放された…』
「ならいいんじゃない?」
『みっくん……私の事汚い女って思ってるでしょ?』
「いや、そんな事ないけど……」
『……けど?引いたでしょ?……ゴメンね…嫌な話ししちゃって』
「いやいや聞いたのオレだし、強制されてたんならそれ違うし。お嬢はお嬢だから関係ないって!」
『フフ……ありがと。みっくん相変わらず優しいね。』
「いや、優しいとかじゃなくて………まぁ……うん…」
『まぁそんな感じでいまは実家に置いてもらってるんだ。慰謝料もたっぷりもぎ取ったしね~!』
「そっか。よかった…のかな?あ、子供はどした?同窓会で会った時子供いるって言ってたよね?」
『もちろん私が引き取ったよ!実家のはなれ占領して自由にしてるよ。』
「そか。」
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