母が亡くなって、遺品の整理をしていたら、このバイブが出てきた。真っ黒い大きなバイブで亀頭は力士の顔になっている。手で持つ電池が入るところには、横綱という文字が書かれている。
あの日、群馬の温泉街を三人で歩いていた時、大人のおもちゃを売っている店の前を通り過ぎたのを鮮明に覚えている。
部屋に戻ってみると、布団が3枚敷いてあった。テレビを見ながら、僕と母が寝込んでいると、課長さんが一人で部屋を出て行っき、母と歯を磨いて明かりを点けて寝ていたら、戻ってきた。
「どこ行ってきたの?」母が聞くと、「ちょっと、買いもの」と課長さんは答えた。「しかし、どこの土産物屋も似たり寄ったりだな」
その言葉に母が笑った。
課長さんは、タバコを吸い、母と僕は布団に入って、課長さんの方を見ている。腕時計を外した課長さんが洗面所に行って、「おえ~うえ~」とか気持ちの悪い声を出して歯を磨いている。
そして、電気を消して母の隣の布団に入ってくる。僕は奥の窓側の布団で、母が真ん中の布団にいた。テレビの白い光が僕の瞼を照らしていて、10分もしないうちに、僕は睡魔に襲われた、というのは嘘で、寝たふりをしていた。課長さんが温泉宿特有のテレビの脇に取り付けてある、100円硬貨何枚かで見ることができるエロビデオを見始めた。母は「何見るの?」と、腕を顔の上にやってテレビの方に顔を向けている。
「白々しいね~、お前も」と言いながら布団の方に戻って、あぐらをかいて座ってる課長さん。「美紗子、ほら見てごらん」
母が身体を起こした。
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