『お腹空いたぁ~!』
妹からLINEにメッセージが送られて来たのは、夕方のことでした。5日前に会ったとは言え、妹からこう急に連絡をしてくるなど、なかったことでした。
仕事中にも関わらず、『どしたぁ~?なんかあったか?』とLINEを返します。普通ではないと感じたからです。
夕方6時。妹は電車で、僕は車を走らせ、二人の中間であるとある町で会っていました。兄妹とはいえ、学生服姿の妹との食事は、やはり気になります。
別に悪いことをしている訳でもないのに、マワリノ目が気になるのです。
『どしたぁ~?』
『なにが?』
『平日に…、めずらしいやん…。』
『お腹空いただけ。ケイちゃんにおごってもらおうと思っただけ。』
『そうかぁ。』
それは、普段と変わらない妹でした。そんな妹なのに、やはり僕は日曜日のことを考えてしまうのです。
『ケイちゃんっ!』と突然にキスをされ、タクシーへと乗ろうとした時に見た妹の涙。キスも涙も、とっちも普通ではなかったからでした。
『なんでキスしたん?』、本当はそう聞きたかった。妹への愛情ではなく、あの涙の意味が知りたかったのだ。
一時間半の食事を終え、僕は最寄りの駅へと妹を送った。『ありがと。』と言いながら車を降りる妹に、『お前、大丈夫か?』と声を掛けた。
『なにが?』
『いや、別に…。』
『ねぇ?なにが?なにが?』
『いや…。』
『愛美、なんかおかしい?』
『別に…。』
『愛美、なんかやっばりおかしい?おかしいやろ~?』
『どうしたんや?』
『なんでもない…。さよなら~!』
そう言って、改札口へと向かった妹。そんな妹の後ろ姿を見ながら、僕は『なにがあったんや、アイツ…。』と呟いていました。
マンションに着き、しばらくして父の携帯に電話を掛けます。
『愛美、帰った?』
『おお、さっき帰ってきたぞ。』
『アイツ、なんかあった?』
『どうしたんや?なんかあったんか?』
『なんか、悩んでるんと違う?』
『あいつがか?』
『うん…。なんか、変やったわ。』
『そうか。お父さんから聞いてやるわ。』
『うん。頼むわ。』
兄として、妹のことはやはり気になる。しかし、離れて暮らす僕には何もすることが出来ず、結局は父にすがるしかないのだ。
『ケイちゃん?』
『おお、アイツからや。』
『なにか言ってた?』
『お父さんのこと頼むって言ってたわ。』
『ケイちゃんが?』
『おお、そう言って来たわ。』
愛美は、その日も一人で部屋へと駆け込んだ。しかし、5日間掛けられ続けていた部屋のカギはされませんでした。
5分後。父の握ったドアノブは5日ぶりに回転をし、その扉が開かれます。
『マナちゃん…?…、今日はええんか?』と聞く父に、『いいよ…。』と答えてしまう彼女でした。
※元投稿はこちら >>