日曜日。
オレに10時に近くのコンビニに来るように言うと、姉は早くに家を出て行った。
いつも出掛ける時は化粧をするのに、その日はすっぴんで紙袋ひとつ持っていっただけだった。
言われた通り10時少し前にコンビニに行くと、駐車場の1番端にいかにもな高級車が停まっていて、助手席で姉が手を振っていた。
とことこと近づいて行くと、姉が言った通りめちゃめちゃ美人な女の人が運転席に座っていた。
『時間通りだね~!エライエライ!』
「あー、うん。……乗っていいの?」
『うん、後ろ乗って~』
姉に言われて後ろのドアを開けると、香水か何か少し甘いけどきつくない、いい匂いがふわっと漂っていた。
「こんにちはー、初めまして…」
〔こんにちは、ケータくん!アヤノって言います!ヨロシクね!〕
「あ、よろしくお願いします。」
『じゃさっそく行こ~!アヤちゃんおねが~い!』
〔はいは~い!〕
簡単な挨拶をするとすぐにアヤノさんは車を出した。
よく見ると姉はしっかり化粧をしていて、しかも学校の制服に着替えていた。
「ねぇちゃん服着替えたんだ?」
『うん!アヤちゃんのリクエスト!お化粧はアヤちゃんがしてくれたんだ~!どぉどぉ?』
「ん、なんか別人みたい。」
〔フフフッ!レイナもともと綺麗な顔してるから、ちょっと化粧するだけでモデルさんみたいになるからね!綺麗なお姉さんでケータくんも嬉しくない?〕
「はい、まぁ…。」
〔ケータくんもいい顔してるよね!中性的だし、化粧したら女の子に見えるかも~!〕
『ヒヒッ!アヤちゃんね、ケータの顔が気に入ったんだって!』
「はぁ…」
そのあと車内は女同士の会話が延々と続いて、たまに話を振られて一言返して…な状態のままアヤノさんの家に近づいていった。
大通りから逸れて急な坂を登った先に、クリーム色の大きなマンションがドーンと見え、車はその駐車場に入っていった。
〔とうちゃく~!〕
『さ、ケータ降りて~!アヤちゃんの部屋1番上の階だからすっごい景色いいんだよ~!』
姉は馴れた感じでエントランスのオートロックを抜けてエレベーターへ向かっていく。アヤノさんは姉の少し後ろ、その後にオレが付いていった。
社長には見えないラフな格好のアヤノさんからは、車の時と同じいい匂いがしていた。
最上階に着き、エレベーターから降りてすぐがアヤノさんの家だった。中に入ると白と黒で統一された生活感のない部屋が目に入った。
『ふぅ~…と。アヤちゃ~ん!さっきのケーキ食べたい~!』
〔はいはい、用意するから待ってて!ケータくんもテキトーに座っててね!〕
「あ、はい、すいません」
姉は自分の部屋にいるかの様に寛いでいるが、オレは初めて会った人の部屋でそこまで寛げる余裕はなかった。
「ねぇちゃん寛ぎすぎじゃね?」
『ん?そぉ?いつもこんなだよ?アヤちゃん遠慮すると不機嫌になるし~』
「オレはどーすりゃいいかわかんねぇし!」
『ウチにいるみたいにすればいいよ!アヤちゃんもアタシみたいにねぇちゃんだと思えば大丈夫~!』
「…知らねー人をねぇちゃんだなんて思えねぇって」
『そかそか、まぁケーキ食べながらゆっくり話そ!』
アヤノさんはケーキとコーヒーを持ってリビングに来ると、すぐに姉の横にくっついて座った。
綺麗な顔でニコニコしているアヤノさんは、美人って言葉がピッタリ合う人だった。
ケーキを取り分けたりカップを並べている間もずっと姉を気にしていて、雰囲気的には彼氏と彼女の様だった。
「あー…ねぇちゃん、オレも話にまぜてや」
『アハハ!ごめんごめん、だよね!アヤちゃん、ケータが拗ねてるからケータとお話しよっか!』
〔フフフッ!ケータくん可愛い!レイナの事大好きなんだね~!〕
「いや、ちがっ…わないけど…」
〔レイナとユナちゃんどっちが好きなのかなぁ??〕
「えぇ……ねぇちゃん、アヤノさんにどこまでしゃべってんの…??」
『ぜ~んぶ!!アヤちゃんはケータの事何でも知ってるよ~!』
「うわぁ…」
〔レイナが細かく教えてくれるから、ケータくんの事何でも知ってるよ~!オチンチンの大きさも!フフフッ〕
「うわぁ……」
『アヤちゃんはアタシが唯一信頼してる人だから大丈夫!』
〔フフフッ。いまさら恥ずかしがらなくてもいいのよ~!レイナのパンツでオナニーしてた事もちゃんと聞いてるから~!フフフッ!〕
「マジか…」
〔だから遠慮とかしなくていいし、敬語もいらないからもっとリラックスしてね!じゃないとオチンチン立たなくなっちゃうぞ?〕
女子2人に一気にいろいろ言われ、なんかヤバいとこ来ちまったと少し後悔していた。
それでもその後いろいろ話をしている内に、姉がアヤノさんに心を開いている理由がなんとなくわかってきた。アヤノさんはとにかく話していて気持ちいい。聞き上手な部分とリアクションがとにかく話し手をいい気分にさせてくれる天才だと思った。
プラス美人となれば、年齢性別問わず誰でもアヤノさんを好きになるんじゃないかとさえ思えた。
『あ、そぉそぉ。アヤちゃんアタシにも言ってないけど今日大事な話があるって言ってたけど、なぁに?』
〔あ、うん。それね。〕
「あ、オレいない方がいい?」
〔ううん、ケータくんにも聞いて欲しいから大丈夫。〕
『んでんで?どんなお話し?』
〔…あのね、私ももうすぐ30になるのね。
…それで、いろいろ考える事が多くなってきて。〕
『うんうん』
〔私、女の子が好きじゃんね?〕
『うん』
〔レイナは知ってるけど、私、処女なのね〕
「ん?」
〔女の子としか経験ないし、オシリはオモチャで遊んでるんだけど、前の方には指も入れたことないんだ。〕
「…はぁ。」
『いつもクリ弄るだけだもんね~』
〔そ。で、女の子が好きなんだけど、自分の子供も欲しいって最近すごく思うようになってきてね〕
『え…』
〔レイナもビックリだと思うけど、この歳になると子供欲しいなって考えるようになったの。〕
〔それで……〕
『あ~…待って、わかった。そゆ事か!』
「オレわかんねぇんだけど。なに??」
『アヤちゃん、聞きづらいだろうからアタシが話そうか?』
〔うん、いい??〕
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