そしてシゲさんたちとの旅行の日。
トウマくんたちと一緒に両親が家に来て玄関で二人を預かり、頭を下げながら帰って行く父親を見ながらトモコが呟いた。
『トウマくんたちのお父さんって…昔どっかで会った気がしない?』
【さぁ…。】
トウマくんたちが増えたので私とシゲさんの車2台で出掛ける事になり、一度みんなを乗せるとシゲさん宅に向かった。
ちょうど車庫で荷物を積んでいるシゲさんがこちらに気づき大きく手を振っていた。
「おぉっ!シゲさんの車ってアレ!?オレあっち乗りたい!」
▼マジで!オレも乗りたい!▲
69年式のマスタング
動いているのはほとんど見たことはなかったが、シゲさんの唯一の趣味の車だった。
{みんなおはよう!}
「シゲさんこれで行くの!?オレこっち乗りたい!」
▼オレもオレも!▲
『ダメだよコウ、シゲさんの横は弥生さんでしょ~!』
〔トモコさんいいのいいの!私は若さんの車乗るから〕
【せっかくの旅行なのにいいんですか?】
〔いいのよ~。私この車苦手なの…〕
『そうなんですか?』
〔シゲさんには言ってないけどね~〕
男子二人に車自慢をしているシゲさんに聞こえないように小声で話す弥生さんとトモコの後ろで、女子二人は車に全く興味を示さずにいた。
シゲさんの車に男子二人、私の車に女性陣を乗せて出発。目的地の宿までは高速で二時間ちょっとだったが、シゲさんの提案でチェックインの時間に合わせて一般道でゆっくり行く事になった。
のんびりとシゲさんの車の後ろを走りながら、二列目のシートではトモコと弥生さんが地区行事の愚痴話、一番後ろの席では娘とナナちゃんがネイルの色で盛り上がっていた。
一時間ほど走ると街から離れ峠にさしかかり、無人販売の小屋とトイレがあるだけのパーキングで一息つく事になった。
「マスタングすげ~!マジでカッコイイ!」
▼な!な!オレ金貯めて買う!マジで買う!▲
{ハハハ、整備も出来んと古い車は乗れんぞぉ?}
【金もかかるぞ?交換部品探すのも苦労するし】
「そーなの?」
▼でも乗りたい!カッコイイし!▲
{まぁたくさん働いてたくさん稼げば問題ない!頑張れ若者!ハハハ!}
トイレ休憩を済ませ、峠を下り田舎の風景が広がる道をのんびりと車を走らせていると、三列目に座る娘が声をあげた。
〈パパ~!お腹すいたぁ〉
『そぉね、マホは朝ご飯食べてないしね~』
【そか、じゃ蕎麦でも食べるか?】
信号待ちのタイミングでシゲさんに良さげな蕎麦屋があったら入ってもらう様に伝え、すぐに茅葺き屋根の蕎麦屋を発見して店に入った。
座敷に案内され、それぞれ注文を済ませてお茶を飲んでいるとシゲさんが小声で娘に話かけていた。
{マホちゃん、下着見えちゃってるから…膝下ろそうか…}
〈あっ…ヒヒッ。ごめんなさ~い。〉
{うん、私が困っちゃうからな、ハハハ}
〔本当は見てたいんでしょ?ウフフ〕
{まぁ…}
〈イヒヒッ、後でたくさん見せてあげる~!〉
娘はシゲさんに向かってスカートの裾をパタパタさせていた。
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