『タックさぁ~、いまどこぉ~?』、山下から電話があったのは、午後9時前でした。
もちろん私は家にいて、掛かってくるはずもない彼女の電話を待っていたのです。
『家~。』
『よかったぁ~。ちょっと迎えに来てくれん~?』
『どうしたぁ~。』
『故障~。』
『はあ?そこで治せばええやん。』
『重傷ぉ~。』
確かにこの時間です。整備員の方も帰ってしまっているかも知れません。『なら、待っとけ!』と電話を切った私も、どこか嬉しく迎えに行くのです。
彼女の会社に着きました。事務所の電気は消えていて、整備工場の電気が僅かについています。
そこに、山下を発見しました。しかし、その隣には三島くんが座っています。『身の危険』すら感じます。私は呼び出されたのです。
『おいっ!おっさん、お前か?典子にいらんでええこと言ったんは?』
『僕やけど…。』
『なんでそんなこと言うんや!お前、俺と典子の関係壊したいんかっ!』
『あのさぁ?キミ、彼女おるやろ?』
『おるよ?だから、なんやっ~!』
『それ、おかしいよぉ~。山下と付き合うんなら、向こうの女性と別れなよ。どっちも可哀想やろ~?』
『おっさんには関係ないでだろうがぁ~!俺はどっちも愛しとんやぁ~!ほっとけっ!』
とかなりのご立腹のようです。そして、僕は山下に言葉を掛けます。
『山下さぁ~、お前それてええんか?お前がええんなら、僕のしたことは謝るから…。』と聞いてみます。『それでもいいっ!』きっと彼女はそう答えます。
しかし、『別れるよ?彼女いるなら、この子とは別れるよっ!』と彼女は言うのです。
それを聞いた、三島くんの目が変わりました。彼も彼女がそんなことを言うとは思ってなかったのです。『典子~?何言うんやぁ!?』と聞いています。
そして、彼女は言います。『あなたと別れるつもりだったから、この人に迎えに来てもらったの~。私、別れるわぁ~!』と彼に告げたのです。
僕も知りませんでした。完全に、この二人に呼び出されたものだと思っていました。
しかし、彼女は電話で『迎えに来てくれん~?』、『故障~。』、『重傷ぉ~。』としか言っていません。
彼女の電話で私に伝えたこと、それは『今の二人の関係』のことを言っていたのです。
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