『山下、アイツはやめとけ!アイツには注意しろ!』、頭の中でそんなことばかりを考えてしまいます。
しかし、なんの確証もない私では、『振られた男悪あがき。』、そんな感じしかしません。自分でも、そう思ってしまうのです。
しかし、ついにその確証を得る日が来るのです。それは工事の最終日でした。その日は日曜日で、工事は全面お休みです。
ただ、電気の切り替えがあるため、どうしても工事の誰かに出てきてもらう必要があったのです。それは、もちろん担当者の方でした。
その担当者立ち会いのもと、休日工事が始まるのです。工事も順調に進み、『午前中で終われる。』のは確実でした。
その通りに工事は完了し、私達が片付けを始めた頃でした。『ブゥ~ンっ!』と一台の軽自動車が工場へと入ってきたのです。
かなり若者向けにコーディネートされていて、乗っているのは女性かと思いました。扉が開くと、大柄な男性が降りてきて、担当者が声を掛けます。
『三島ぁ~!どうしたぁ~?』、乗っていたのは山下の彼氏の三島くんです。服も派手で、作業服姿しか知らない私は、『若いなぁ。』と思ってしまいます。
ところが、その助手席が開きます。『山下かぁ~?』と一瞬思いました。しかし、降りてきたのは30歳後半の女性。彼女もかなり派手です。
『ああ~。由美ちゃん、故障かぁ~?』、その担当者の言葉に驚きます。その方も知っているほど、二人はカップルなのです。
そこで2つの不安がよぎりました。『山下が三島くんと付き合ってるの、誰も知らないのでは?』。
そして、『山下、男に彼女がいるの、あいつは知らないのでは?』と。
私は初めて、自分から彼女へ電話をしました。日曜日の夕方でした。
『どうしたのぉ~?』
『山下さぁ、今日あの子と会う~?』
『今日は会わんよ?どうして~?』
『どうして会わんのよ?日曜日やろ~?デートは?』
『なんか忙しいって言ってたわぁ~。』
そんな彼女がどこか不憫に思え、
『山下~?お前、ちょっと出て来いっ!』
『どしたのよぉ~?』
『いいから、ちょっと出て来いっ!』
『なにか言ってよぉ~?』
『会って話するわっ!ファミレスで待ってるから、絶対出て来いよっ!』
と言って、電話を切りました。あの彼女でも、『彼氏に関係がある話。』と言うのは、きっと分かっています。
僕はファミレスに座り、彼女が来るのを一人待つのです。
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