『山下~?どこか行くかぁ~?』
『タックさぁ?ごめん、わたし彼氏がいるんよぉ~。』
この会話が、頭の中で何度も繰り返されていました。何気なく誘ったような言い方をしましたが、私の中では一大決心だったのです。
簡単に断られてしまい、その後の会話など、もう頭には記憶はされません。この年で、また女性から振られてることを経験したような感じです。
仕事をしていても、なぜか山下の顔が浮かび、自分が彼女を好きになっていたことに気づかされます。
車を運転しながら、この年で涙が溢れてしまうのでした。
それでも、山下からの電話は定期的にありました。心を入れ替え、『同級生の山下。アゴの山下。』として、彼女に接するしかありません。
そんな時に、『彼氏、同じ会社にいるんよぉ~。』と彼女から聞かされるのです。『そうかぁ。』と言いますが、返事もどこか適当になります。
『事務所に座ってる人~?』
『違うんよ。いつも、工場でいるんよ。』
『年、なんぼよ。』
『29…。』
『はぁ~?29となっ!』
『うん、29。』
『イケメンか?』
『格好いいとおもう…。』
『そうかぁ~、まあ仲良くやれや。』
とノロケ話に付き合わされ、その日は電話を切るのです。しかし、私はすぐに彼女と会うことになります。
例の工事がスタートをし、その手伝いで1日だけおじゃまをすることになるのでした。
工事が始まり、お昼過ぎにようやく軌道に乗って来ました。事務所から出てきた山下に、『おい、彼氏どれよ?』と聞いてみます。
『あれぇ~。』と指をさした先には、背の高い男の子がいました。そう、私から見れば男の子です。
少し近づき、三島くんの顔をみます。確かにイケメン顔をしています。しかし、その男の子に私は変な雰囲気を感じてしまうのです。
言葉使いは悪く、この年でなのに近寄り難い雰囲気を持った男だったのです。
ちょうど自販機の前で二人になり、『ああ、わたし山下さんと同級生になるんです。』と話し掛けます。
『そうですかぁ~。』とは言いますが、どこかめんどくさそうで、早く切り上げてあげようと『山下さん、頼むねぇ~。』と言って立ち去ります。
しかし、『おっさん、勘違いしてないか~?あのおばさんと関係ないで、俺。』とハッキリというのです。
私はその場を去りました。彼から感じていた妙な雰囲気は、これだったのかも知れません。人を寄せ付けないオーラ。
それは寄せ付けないのではなく、彼が人間不信なのではないかと感じさせるものでした。
なら、なんであんな山下と付き合っているのでしょうか?『遊び?てがい?』、そんな言葉がよぎってしまいのです。
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