山下との交際を始めて僅か1ヶ月半、私が身軽だったこともあり、二人の結婚が決まりました。入籍日は、私よりも遅生まれの彼女の誕生日となります。
お互いの家を行き来しながら、その日を待ったのです。
仕事を終え、私はこの日も山下の家へと向かっていました。坂の入り口に掛かる頃、脇道から一台の車が出て来ます。
私の車のライトに照らされ、それが山下の車だと分かるのです。そして、ふとあの日のことを思い出します。
『あいつ、この前もここで曲がったよなぁ~。何があるんだろう?』、そう思った私は車の角度を変え、ライトでそちらを照らしました。
しかし、脇にそれた道はとても短く、すぐに行き止まりになっていて、そこには一軒のお宅しかありません。
彼女がおじゃましていたと思われるのに、電気もついてなく、どこか不気味です。
私は車を近くに停め、そのお宅へと向かいました。
夕暮れの中、その家の前に立ちました。誰もいない気がします。表札もなく、壊れ掛けている郵便受けがあります。
その郵便受けには、マジックで名前が書いてあり、『岩口隆文』と書かれています。
『』
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