彼女を胸に抱き締めたまま、少し時間が止まりました。あれだけ暴れていた山下も落ち着いたのか、動きが止まりました。
その時、『タック~、ちょっとトイレ…。』と彼女が言うのです。『嫌ぁ~!離さんよぉ~。せっかく掴まえたんやから~。』と意地悪をして返します。
『トイレ行かせてよぉ~。もう、まけそう~…。』と頼む彼女に、私はこう言うのです。
『お前が俺と結婚してくれるなら、離すわぁ~。』
もちろん冗談ですが、彼女との『会話の掛け合い』を考えれば、なかなかの手だと思います。しかし、山下は更にその上を行くのです。
『じゃあ、私と結婚したいなら、離してよぉ~。』
彼女はきっと、私よりも豊富な恋愛経験をしてきているのでしょう。ちゃんと男心というのを把握しているのです。
私は胸で抱き締めていた手を離すと、そこから子供のような体型の女性が出て来ます。『苦しかったぁ~。』と言って、彼女はトイレに向かうのでした。
トイレから、『ジャ~!』と勢いよく水の流れる音がしました。音がやむと、トイレを済ませた彼女が出て来ます。
『さっ、続きを~…。』と、焦って考えてしまう私をよそに、彼女は別の部屋へと消えてしまいます。
当たり前でした。彼女はトイレをして、股間を汚してしまったのです。そのケアをしに行ったに違いありません。
それにしても古い家です。かなりの老朽を感じさせ、彼女の子供のどころか、彼女自身もこの家から小学校へと通っていたのではないでしょうか。
そんな家に彼女と二人っきり。『あぁ~、こんなことなら牧野さんじゃなく、山下に目をつけていればよかったなぁ~。』と小学生の自分を責めるのでした。
戻ってきた彼女は、私の対面に座りました。ちょうど席が入れ替わった感じです。ベビーチョコレートを口に入れ、部屋を見渡しています。
彼女が視線を戻すと、私と目が合います。『なぁ~?今日、泊まっていってもええかぁ~?』と聞いてみます。
山下は、『タック、お酒飲んだからもう帰れんでしょ~?』と言ってくれます。しかし、私は本当の気持ちを伝えました。
『お前、抱きたいんやけど…。お前が好きになっても~たわぁ~。』
そう告げた私に、一瞬真面目な顔を見せた山下でしたが、『だから、お酒飲ませたんじゃわぁ~。気がつきなよぉ~』と笑いながら答えるのです。
本当のところはよく分かりません。残念ですが、その辺りは彼女の方が上です。同級生なのに、いつからこんなに差がついてしまったのでしょうか。
私は、着ていたセーターを一枚脱ぎました。普通にこの部屋が暑く感じたからです。しかし、それを見た山下も、ボタンを外し青いセーターを一枚脱ぎます。
中には、白と黒の柄の入ったワンピースが着込まれていて、本当に出掛ける気はあったようです。
しかし、『女が、自分から服を一枚脱いだ。』という事実が、私の気持ちを高めてしまうことになるのです。
山下は冷静な顔をして、私を見ていました。こたつから立ち上がり、ワンピース姿の自分を抱き締めるまで、彼女はずっと座ったままで私を見ていたのです。
私の両膝は絨毯の床につき、彼女もそれに応えるように背伸びをしてくれます。しかし、やはり身長差がある二人です。
キスは、どうしても僕が上からとなってしまいます。そして彼女の背中に手を廻すと、山下の身体の小ささを感じるのです。
二人の唇は重なり、二人の舌が絡み合いました。私は彼女を押し倒そうとしますが、彼女はその小さな身体で踏ん張ろうとしているのです。
少し押し合いが続きましたが、結局彼女は折れませんでした。その理由が分かりました。私の手は彼女に両手に握られ、そしてこう言われるのです。
『タック~?床、硬いんよぉ~。ベッドとか行くぅ~…?』
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