翌朝。彼女を迎えに来た私は、『おはよー。』と声を掛けました。『おはよー。ありがとー。』という彼女も、すでに事務服を着ていて万全です。
また、彼女からのキスが頭を離れない私は、どこか無口になり、運転を続けていました。しかし、気になるのはもう一つ。会社にいる三島くんのことでした。
『三島くん、おるよねぇ~?』
『着てるやろうねぇ~。』
『大丈夫~?』
『私~?心配なら、タックずっとおってよ~。』
『なんでや~!心配はしてないわぁ~。』
『また、口説いてくるかもよ~。』
『そやねぇ~。』
『そんな強い子違うよぉ~。あの子…。』
『そうなん?』
『普通の子。人付き合いが下手なだけ~。』
『そうかぁ。』
『うん。中身は弱い子。不器用なだけ。』
やはり、母親をやっていただけのことはあります。山下は、そこまで三島くんのことを冷静に分析をしていたのです。
『ちょっと、止めてよ~。』、突然の彼女の言葉に、『忘れ物か?』と思います。しかし、『こっちも、なんか弱そうねぇ~。』と彼女が言うのです。
昨日の再現でした。また頭を持たれて、唇を奪われたのです。『よし、行こうっ~!元気に行こう~!』、私の元気な言葉に、彼女も笑っていました。
その夜、『タック~?暇ぁ~?』と、山下からのいつものメール開始の合図です。『ひまぁ~!』と返して、彼女の返信を待ちます。
しかし、すぐに電話が掛かって来ました。『どうした?』と聞くと、『電話ぁ~!』と甘えたようにしゃべって来ます。
すぐに、『なぁ~。どっか行かない~?』と言われ、『ええよ。じゃあ、迎えに行くわぁ~。』と電話を切ります。
これは、山下との初めてのデートです。『ファミレスか?』『居酒屋か?』『ラウンジか?』といろいろと考えを張り巡らせるのです。
彼女の家の前につき、電話を入れます。『着いたよぉ~。』と言うと、『ちょっと入って来なよ~。』と言われました。
もちろん山下の家に入るなど、初めてのことです。『準備が遅れている。』と思っていたので、私は玄関で待たせてもらいます。
廊下に彼女が現れます。『入ってええよ…。』と言われ、『おじゃましますっ!』と靴を脱いであがりました。
私は、まだまだ子供だったのかも知れません。女性に家に招き入れられたのです。
その意味も理解せず、『山下、どこ行くー?』と言いながら上がり込んだ私は、まるで子供でした。
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