智樹の予感は的中した。
男達は玲子のいる自宅へと入っていった。しかも皆自分の家に入るかのようにすんなりと。男達が家に入るのを確認し、智樹も玄関前までやってきた。自分の家だというのに、なぜか他人の家に忍び込むような罪悪感を感じている。この玄関を開けたら何があるのか。母が言う《仕事の客》がまさに彼らなのか。知りたいようで知りたくない。不思議な感覚に陥っていた。
玄関の鍵は開いていた。
智樹は音を立てないよう静かに家の中に入り、ドアをそっと閉めた。
1階のリビングには人気がない。2階から何人かの低い声が聞こえる。きっとさっきの男達に違いない。玲子の寝室だ。智樹は階段をゆっくりと上がっていく。途中で智樹は自分が丸腰であることに気づく。しかし階段を上る足は一歩また一歩と確実に玲子と彼らのもとへと近づいていく。
寝室のドアが閉まりきっておらず隙間が開いていた。中から男達の低い声がする。智樹は恐る恐るその隙間から様子をうかがった。
ベッドのヘッドボードには何枚もの1万円札が置いてあるのが見えた。
続く
※元投稿はこちら >>