智樹はひどく混乱していた。
母、玲子が自宅でカラダを売っていたこと。しかもそれを《仕事》と呼び、買い手をSNSで募っていたこと。あの優しくて真面目な母がなぜ、という気持ちだった。
智樹は重い足取りで自宅へと戻った。
再び玄関を開けるとバスルームから音がした。玲子がシャワーを浴びているようだ。体中にぶちまけられた男達の体液を洗い流しているに違いない。智樹は内心動揺しながらも平静を装いリビングのソファに腰掛けた。
シャワーの音が止み、玲子がバスタオルを巻いて出てきた。
「きゃっ!!」
玲子はリビングに入るなり声をあげた。
『母さん、ただいま』
「智樹、、帰ってたの? 誰かと思ったわ」
『ごめん、早めに帰ってきちゃって、お客さんは?』
「、、ええ、もう帰ったわ、、」
『母さん、昼間にシャワー浴びたりするんだね』
「う、うん、ちょっと汗かいちゃったから、、」
『汗? もう10月だよ。しかも今日は肌寒いくらいだけどね』
智樹は玲子を試すように少し意地悪に言った。
「そ、そんなこと気にしなくたっていいじゃないの、、き、着替えてくるわね」
玲子は明らかに動揺した様子で、体に巻いたバスタオルを手で押さえながら部屋に戻っていった。
リビングにひとりなった智樹は先ほど盗み聞いたSNSアカウントをスマホで検索していた。
すぐにヒットした。
そこには下着姿や大事なところを手で隠す半裸の自撮り写真が投稿されていた。さらに写真のひとつひとつに男を誘惑する言葉が添えられている。顔こそ写っていないものの、体つきや背景に写るインテリアを見れば、その写真の女が玲子であることは明らかだった。
玲子が服に着替えて戻ってきた。
智樹はとっさにスマホの画面を隠す。
玲子の髪がまだ少し濡れている。
どことなく憂いだ表情の玲子に智樹は大人の女を感じていた。
続く
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