1時間ほどでお母さんが帰ってきた。僕の部屋に入って来ると、ホームセンターで買ってきた大きなニッパーを見せて、これで切断して欲しいと頼まれた。下にはお父さんとお姉ちゃんがいて、いつ入ってくるかもわからない。
僕は聞いた。今?
うん。母が焦っているのがわかる。
でも、お父さんに切ってるところ見つかったらまずいよ。
そこに、お父さんがドアを開けて夕飯をどうするか聞いてきて、びっくりする。
母が芝居するように、何にしようか?そう言って下に降りていった。
お母さんが、豚汁を作っている間、僕たちは微笑点を見ていた。
司会者が、座布団運びの人に、あれを皆さんに渡してください。と言うと、大きなニッパーを持ってきてみんなに渡した。
私が、と司会者が言った。そんなもので何を切ろうとしてるのか聞きますか、それに適当に答えてください。
はい。じゃあ、マン太郎さん。
そんなもので何を切ろうとしてるんですか?
自転車の鍵を切ろうとしています。
一枚上げて。違法駐輪、あれは迷惑ですよね。
はい。じゃあ、珍宝座さん。
そんなんで何を切ろうとしてるんですか?
親子の縁を切ろうとしています。
二枚取りなさい!何を馬鹿なこと言ってるんだい。
夕飯を食べているとアワビさんの終わりの曲が流れてきて、物凄い喪失感があたりに漂っていた。
お姉ちゃんが二階に上がっていき、僕も上がっていく。果たしどうなちゃうんだろうと思いながら。
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