野球中継が終わりを迎えようとしていました。今日は珍しく、巨人軍の勝利で終わりそうです。最後のバッターを打ち取ると、『よし!』と母が声をあげます。
ヒーローインタビューまで見終えた母は、再び台所へと向かうのでした。
僕は立ち上がり、自分の部屋に向かおうとします。立ち上がったことで、母から何かのアクションがあると思ったからです。
母が掛けてきたのは、『何時?』という言葉。いつものように、明日僕が起きる時間を聞いて来たのでした。
僕は部屋に戻りました。ベッドに入り、『今夜は、ある?ない?』と考えてしまいます。仕事をしていても、考えるのは今夜のことばかりでした。
それが何もなく終わろうとしているのは、やはり残念でもあるのです。
物音で目を覚ましたのは、深夜12時近くでした。知らない間に、2時間くらい寝てしまっていました。
しばらくして母の足音が聞こえ、咳払いをしながら、自分の部屋へと戻ります。台所にでも行っていたようです。
しかし、それは『母がまだ起きている。』ということを証明させてしまったのでした。
僕の手は、何度も何度も股間へと延びます。半分勃起したものを触り、大きくにでもなれば、パンツを降ろして始めるのもいいとさえ思っています。
しかし、『母が起きている。』という事実がそれ以上のことをさせません。さっきの咳払いは、きっと僕に向けられていたもの。
まだ、心の中では諦めてはいないのです。
母が部屋に戻ってから、10分くらいが経ちました。今度は僕が部屋を出ました。そして、母と同じように咳払いをし、同じように台所に向かうのです。
トイレを済ませ、リビングに向かいます。そこで意味もなく時間を掛け、現れるかどうかも分からない母の部屋の扉が開く音に集中をするのです。
しかし、残念ながら母は現れず、7~8分の滞在で僕は再び部屋に戻り、眠りにつくのでした。
『カズちゃん?』、夢の中で僕は名前を呼ばれていました。その相手が誰なのかはよく分かりませんが、僕の名前を呼んでいることだけは分かります。
しかし、続けられた『寝てる~?』という言葉が、夢と現実を分からなくしてしまいます。目を開くと、真っ暗ななか、部屋の扉が少し開いているようです。
現実に戻された僕は、身の危険を感じます。そこには人影があり、寝惚けている僕には認識が出来ないのです。
目は開いていませんが、その人物に『なにぃ~?』と声を掛けました。『起こした?』と聞く声が、母の声だと分かり、そこでようやくと安心をするのです。
布団にくるまっていた僕は、眠りを妨げられたことに苛立ち、母に対して『どこか行けよ~。』とさえ思ってしまいます。
寝る前のあんな期待感など、もうとっくに無くなってしまっていて、母に背を向け、『どうしたん~?』と冷たく返してしまうのです。
母は、『ごめん、寝より~。』と言って、その扉は閉められました。目の覚めない僕は、母のことなど気にもせず、睡魔に落ちて行こうとするのでした。
しかし、すぐに頭がハッキリとして来ます。母が部屋に来たことよりも、母に冷たく接してしまったことへの後悔が、眠りを妨げ始めたのです。
『悪いことしちゃったかなぁ~。』と思って目が覚め、そして『母さん、なにをしに来たのか?』と頭が働き始めるのです。
その答えは明白でした。母は僕を求めて、やって来てくれたのです。でなきゃ、こんな時間にやって来て、意味もなく扉を開ける訳がないのです。
数時間前のあの期待感が、僕の中で再び溢れ出しました。一度は諦めてたのに、まだ終わってはいなかったのです。
僕は部屋の扉を開きました。もちろん深夜なので『ドン!』と強くは開けられませんが、それでも最大限の音をさせて、部屋にいる母へ聞かせるのです。
廊下を歩く音もわざと大きな音をたて、母の部屋に向かっていることを知らせようとしてしまいます。そして、その大きな音は母の寝室の前で止まりました。
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