サトル、サトル、母が恐怖の顔つきでそう言った。今まで見たこともないような母の顔。あたりの空気が一変した。母の視線は突っ立ていた僕の後ろを見ている。母の視線の先に振り返る。玄関のドアの中心のちょっと下。郵便受け。目が見えてゾッとした。郵便受けがすぐに閉まって、誰が逃げていくのが分かった。すぐ玄関に。サトルと母の声。玄関を開けて靴を履いて追いかけた。小さな折りたたみ自転車みたいなもねをこいで逃げていく後ろ姿だけ見えて左に曲がって消えていった。母が玄関から顔を出していた。そこに行くと僕に抱きついてきた。
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