母が部屋から出てきました。なだめるような声を掛けながら、兄を自分の部屋に連れていきます。母はその足で風呂場に駆け込みます。
静かな山奥のため、家の中の物音か全て聞こえ、その一つ一つの意味を感じとれるだけに、ツラい時間帯でした。
『あんた、ケガしてない~?』 、風呂から出てきた母は、パジャマの胸元のボタンを掛けながら、僕に聞いて来ます。
兄の激しいパンチとキック。加減のないそれは、僕の身体を吹っ飛ばすには充分な強さでした。『大丈夫。』と母に告げます。
身体のあちこちが痛く、見えないところで腫れ上がっているかも知れません。しかし、母に変な心配を掛けまいと、ウソをついたのでした。
その夜、初めてこの家で眠りました。用意された部屋にはカギがついてなく、兄が突然襲ってくる恐怖もあります。
さっきの一件で、少し分かりました。兄にとって僕は敵。テリトリーに入ってはいけない存在。そして、母は獲物。自分の欲求を満たしてくれる、唯一の獲物。
本能的なのか、僕から母を守ろうとしているような、そんな兄でした。
翌朝、僕は無事に目覚めることが出来ました。というより、寒さで目が覚めたのです。まだ、夏の終わりです。
しかし、この山奥では朝晩は寒く、隣に流れる川が余計にその雰囲気を作ってしまっています。
時計を見れば、まだ朝の6時。普段なら二度寝に入るところですが、キャンプ気分にでもなったのか、起きて外に出ます。
山のきれいな空気を吸い、間違いなく飲めそうな透明感のある川を眺めます。すぐに家の玄関が開きました。母でした。
『もう起きた?』と言いながら、僕の方へと近づいて来ます。『きれいな水やねぇ。』と言い、母と川辺まで下りて行きます。
こんな雰囲気で母と一緒にいるなんて、何年ぶりでしょう。間違いなく、中学生になってからはなかったことでした。
冷たい川に足だけ浸けて、それだけでもキャンプ気分でどこか楽しい。それを、隣で母が優しい目をして見ているのです。
20歳にもなったのに、ここでは子供に戻ってしまっていました。
母を見ました。パジャマの上にガーディアンを羽織り、しゃがみこんで僕を見ています。母は、今年54歳になりました。
目尻にシワが出来ていて、髪もチラホラと白い物も見えます。この7年間で、母も年を取ったのです。兄のことで苦労も耐えないのでしょう。
その夜。会社から戻って夕食を食べていた僕。母と語り合いますが、いつ変貌して現れるかも分からない兄に、どこか怯えているところもあります。
しかし、この日は無事でした。何も起こることはなく、僕は寝室に入ったのです。しかし、やはり『何か』は起きてしまうのです。
廊下を歩く母の足音。それだけでは、気にもしなかったと思います。しかし、近くで奇声をあげた兄。それを聞き、何かが起こっていることに気がつきます。
しばらくすると、『ヨウちゃん~!ヨウちゃん~!』と母が兄をなだめるように小さく声を掛け、その言葉の振動からも母の焦りを感じ取れます。
母が出した小さな声。それはまさしく、僕に向けられたものでした。部屋にいる僕に、やはり母も気づかれたくはないのです。
物音がしてから10分後。母と兄が関係を持つ、あの部屋の前に僕は立っていました。扉は閉められ、中の様子を伺い知ることは出来ません。
しかし、兄の奇声があがり、激しく動く振動はは廊下にまで伝わって来ます。母の上に乗り、自分のモノを母の中に入れて、腰を振っているに違いありません。
閉められていた扉が開いたのは、その直後でした。恐る恐る、僕は扉を開いたのです。しかし、見えたのは、僕の描いていたものとは違う光景でした。
僕に背を向けているのは、兄のはずでした。兄の背中が最初に目に飛び込んでくるはずでした。
しかし、見えたのは母の背中。それも、パジャマを脱いで、上半身は裸の状態です。母は振り向き、『タカー!入ってきたらダメー!』と叫ぶのでした。
向こうに、仰向けに寝ている兄の顔が見えました。モンスターのように恐い顔をして、母を求めていました。
母は慌てて、兄の身体の上から降りようとします。そして、見えたのは母のお尻。母が全裸であることに、ここで気づきます。
僕は騙されていたのです。兄の性欲を満たすために、母は兄の道具になったとばかり思っていました。しかし、それは間違いです。
扉を開いた瞬間、その一瞬だけですが見えたのは、母が自分から腰を振っていた母の姿。それが目にやきついてしまいます。
『タカー!ノックくらいしよー!』と注意をして、部屋を出ていこうとする母。しかし、それを二人の息子が止めました。
僕は真実を母に求め、兄は母の身体を再度求めてのことでした。
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