レイコの愛有る企てを受け流す様に見える彼の姿に、彼女は次第に追い詰められて行った。
そして膠着した今の状態に耐え切れなくなった彼女は、その切羽詰まった心の内を彼に対してぶつけて行く。
英樹「なっ?・・なに? 今、何て言ったの?」
あや「・・だから・・」
英樹「だから?・・・」
あや「わたしを・・お嫁さんにどうかなって・・」
英樹「お嫁さん?!! ぼ、僕に?!!」
「あや?・・本気なの?!!」
彼女は黙って首を縦に頷く。
英樹「あやと・・僕が?」
彼は只呆然と立ち尽くしている。
英樹「・・お母さんのあの話って・・ホントの事なの?・・」
そんな彼は今迄のあやふやな態度と周囲を舐めていた自分自身を酷く悔やんで行く。
英樹「あや?・・ちょっと待ってて!!」
「俺・・顔、洗って来る!!」
あや「え?・・・う、うん!」
彼は何かをブツブツと呟きながら洗面所へ向かってゆっくりと歩き出す。
そして数分後、何かを吹っ切った様なすっきりとした面持ちで彼が再び現れる。
英樹「あや?・・僕が大学を卒業するまで待てる?」
あや「・・ひでき?・・だいがく、そつぎょう?・・」
英樹「卒業したらあやを迎えに行く!!」
「死んでも行く!!」
あや「・・しんだら・・」
英樹「え?」
あや「しんだらむかえにこれないよ?」
英樹「ぷっ!(笑)・・そりゃそうだ!!」
あや「ホントに・・ほんとうにわたしでいいの?」
英樹「あやじゃないとこっちが困るよ!!」
あや「ひできもしってるよね?
わたしのからだってよごれているんだよ?」
英樹「ああ! それだったら風呂場で
洗えば済む事じゃん?!!」
あや「よごれが・・もしよごれがおちなかったら?」
英樹「う~ん! そう云えばお母さんから
昔、よ~く言われたよ!
あんたはカラスの行水だ~って(笑)・・
だから汚れてるのはお互い様だね?!!」
あや「・・それと・・それからひできって・・
これからいくらでもかわいいおんなのこと
いっぱいいっぱいしりあえるんだよ?・・
それでもいいの? こうかいしないの?」
英樹「ええっ?!!」
「くっ、くくくっ・・はぁっ、あはははっ!!(大笑い)」
あや「なっ?・・」
英樹「・・おんなじ?・・全く同じだ!!(更に笑)」
あや「・・・・・???」
英樹「お母さんも同じ事を言ってた!!
全く同じ事をね! それもこれまた
似た様な場面で同じ様な口調でね!!」
「もしかしてお母さんとあやって・・
実は本当の姉妹なんじゃないの?(またまた笑)」
あや「・・・・・(泣)」
「姉さんと私が本当の姉妹である筈が無い!!」
英樹「え?」
あや「だって・・だって本当の姉妹なら
こんなに心が通じる訳が無いもん!!(大泣き)」
英樹「・・あや?・・」
彼と彼女は、たった今、本当の意味で一つと成り得たのであった。
※元投稿はこちら >>