レイコ「あんたったら!!」
「その人が、どれだけ迷惑だったか!!」
「ちょっとでも考えてみた事が有るの?!!」
彼女は同業のよしみでその時の女性の大変さがよく理解出来た。
英樹「えっ?・・そうなの?」
「・・う~ん?・・でもなぁ~?・・」
レイコ「でもって、どう云う事よ?!!」
英樹「でも、その時・・えっと?・・」
「え~と、何て云う人だっけ?」
レイコ「その・・君江さんって人?」
英樹「そうそう! その君江さんがね!!」
レイコ「君江さんが?・・どうしたのよ?」
英樹「帰り際に僕に抱き着いて来て、
これあげるって名刺をくれたんだよね~!(誇り)」
彼は胸を張ってその事実を彼女へ伝える。
レイコ「はあ?・・名刺?」
「何よ?!!・・そんなの当たり前じゃん!」
英樹「でも裏にメッセージが書いてあったよ?」
レイコ「何て?!」
英樹「自宅の住所とメルアドと
今度、手料理をご馳走して”ア・ゲ・ル“って!」
その君江という熟年泡姫は、若くてイケメン風に見えて仕舞った彼にメロメロになっていた訳である。
レイコ「はあぁぁぁ~~???!!」
(なんだそりゃ?!!)
「なっ、なによ?!!・・それって?」
英樹「何でも、僕のちんこが最高に気に入ったって!!」
「そう、何度も言ってたよ?!」
レイコ「ガックリ!!(疲労)」
彼女は全身から脱力して、肩を大きく下げる。
レイコ(この子ったら、超年上の風俗嬢からナンパされるなんて・・・)
(先が思い遣られ過ぎるっ!!)
そんな彼女は能天気にも笑いながら喋る息子に苛立ちを憶え、その40過ぎの風俗嬢に強烈な嫉妬心を抱いて仕舞う。
レイコ「あんたは?!!(怒)」
「アンタって子は年上なら誰でも良いって言うの?!!」
英樹「そっ、そんな事・・言って無い・・けど?」
レイコ「だって、今ニヤニヤしながら言ってたじゃん!!」
英樹「そんな?!! にやにやなんてしてないよ?!!」
レイコ「してたんですぅ~!!」
「にやけた顔でのろけてましたぁ~!!」
英樹「そんなぁ~・・あんまりだ!!」
レイコ「あんまりなのはアンタだよぉ~!!」
英樹「酷い!! ひどすぎるっ!! その言い方!!」
レイコ「なによ?!! 酷いのはどっちよ?!!」
英樹「僕は只・・・ただ経験した事を
正直に喋っているだけなのに・・」
レイコ「なにが正直よ!!」
「Kのくせに散々風俗通いして、挙句の果てに
母親の仕事場まで調べて押しかけて・・」
「もう、いい加減にして!!」
英樹「うっ、くっ!!・・くそっ!!(悔)」
二人の喧嘩は、最早子供同士のそれである。
そして一頻り言い争った二人には長い沈黙の時が訪れる。
レイコ「・・・やっぱり・・・」
「・・やっぱり無理、かもね?・・」
「・・親子で愛し合う、なんて?・・」
沈黙を破ったのは彼女の方であったが、彼はまだ黙ったままである。
レイコ「・・・・・」
「・・もう・・」
「・・もう、プレイ時間も終わりだし・・」
「帰ろっか?・・ね?」
彼が彼女をリザーブした時間は、そろそろ終わりを告げようとしている。
彼女はベッドからゆっくりと降りると、その身だしなみを整えてフロントへと終了の連絡を伝える為に、電話の受話器を上げると彼がその手を下へと抑えて仕舞う。
レイコ「アンタ?・・何やってんの?!」
「もう夢の様な時間は終わりなの!」
「・・離してっ!!・・その手を離してよっ!!・・」
彼女の強い制止の言葉を彼は受け容れる事が出来ない。
英樹「いやだ!!・・絶対に離さない!!」
レイコ「何言ってんの?!!」
「私には次のお客さんが待ってるの!!」
英樹「そんな奴に僕のお母さんを渡さないっ!!」
「・・絶対に!!・・」
レイコ「アンタ?!! 頭がおかしくなったの?!!」
「いい加減にして!!」
英樹「それじゃあ、次の時間も僕が買い取る!!」
「それならいいでしょ?」
レイコ「はああぁぁ???」
「ダメだわ、この子?・・もう訳が分かんなくなってる!!」
英樹「訳が分かんないのは、お母さんの方だ!!」
「僕の気持ちも良く知らないで・・」
彼は彼女の手を握り締めながら、大粒の涙を零して行く。
レイコ「英樹?・・・あんたって?」
彼には母への熱い想いが存在するだけであった。
英樹「お母さんは、いつもそうだ!!」
「僕の事を勝手に決めつける!!」
「僕の気持ちなんて・・なんにも分かっちゃいない!!」
レイコ「・・英樹?・・」
英樹「お母さんの事が好きって・・
ホントに・・本当にそう思ってるのに・・」
彼は顔をくしゃくしゃにして彼女への想いを訴える。
英樹「分かってるよ!!」
「お母さんが好きだなんて・・最低だって!!」
「でも・・でも好きなんだからしょうがないじゃない?!!」
「・・・分かってる・・ちゃんと分かって・・」
彼女には彼の”分かってる“と云う言葉だけで充分であった。
レイコ「・・英樹?・・」
「・・・・・」
「おかあさんで・・いいんだ?」
英樹「・・えっ?!!・・」
「・・・・・」
「・・うん!・・」
レイコ「・・でも40過ぎのおばさんと、一緒だよ?・・」
「それでもいいんだ?」
「・・ホントに・・構わないの、ね?・・」
英樹「・・ぅんっ!・・」
レイコ「・・分かった!!・・」
「私も英樹と一緒・・だねっ!!」
英樹「・・・・・(泣)」
彼女は彼の手を包む様に両手で握る。
そんな二人はごく自然に顔と顔を近付けて行く。
「・・・チュッ!・・くちゅっ!!・・」
そして二人は唇同士を熱く長く深く、更に優しく優しく重ねて仕舞う。
様々な出来事と紆余曲折を経て、今二人は真の愛を確かめ合っていた。
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