第18話
明日香の突然の発言につい声を大きくしてしまった
「な、なに言い始めるんだよ」
「ちょ、ちょっと聞きたくて」
「なんでそんな話なんか・・」
「・・学校で」
「学校?」
「うん、さっき、あきちゃんが彼氏の話とかしてたでしょ」
「あぁ」
「クラスにもね、何人かは、付き合ってる人がいて、昨日、彼氏とキ、キスしたとか・・話してるコがいるのね」
もじもじとしながら話す明日香を見ながら、静かに聞く
「男子にもいて、彼女が出来たとか、いつキスするのとか、コソコソ話したりしてるの」
「うん」
「みんなね、付き合う話をすると、キスとか・・その後とか、そういう話をしてて、明日香も、あぁ、そういうものなんだって思ったの」
確かに、俺も中学、高校の頃はそんな話ばかりしていた気がする
性というものを初めて知り、女に興味が湧き、見えないもの、触れないものへの欲求が大きく高まり、それを満たした者への羨望、また、満たしていない自分を鼓舞するように、友人達とそんな話ばかりし、家では自らの手でその気持ちを毎日、何度も満たしていた
明日香は何故か悲しそうな表情を浮かべている
「明日香ね、友達とかいないから、席で聞こえてくる話を聞いてたんだけど、休み時間に、後ろの席の男子が・・」
「うん」
「・・エ、エッチしたいけど、あ、明日香とは嫌だって・・あんなガイコツみたいなブスは嫌だって・・小さな声で話してて」
「・・ひどいな」
泣きそうな顔をしている
「その後で、お昼休みにトイレに行ったら、入ってきた女子が、その男子の友達から聞いた話を、あっ、二人は付き合ってるんだけど・・明日香とは出来ないって話をしてたって・・笑いながら話してた・・みんなで、あいつとは無理だって・・私が男
なら嫌だって・・話してて、明日香、トイレから出られなくて・・」
ポロポロと泣き出す
俺は居ても立っても居られなくなり、胸の中に収まる明日香を強く抱きしめた
「・・嫌なのかな?、明日香のこと嫌いなのかな?、ブスだから?、痩せすぎてるから?」
「そんなことない、そんなことないよ、心配しなくても、明日香のこと好きな男も現れるから」
子供は残酷だ
思っていても至近距離で話すようなことじゃない
聞かれても構わないくらい、いや、むしろ聞こえるように言っていたのかもしれない
自分が誰かより上のステージにいたいという欲求だけが頭の中を支配する
泣きじゃくる明日香を、俺はただ抱きしめるしかなかった
明日香も俺の体に強くしがみつき、鼻をすすりながら、身体を震わせていた
父親のいない家庭、母も心に病を持っており相談出来ない状況、自然と強くなるしかないが、それでもまだ子供、今日やっと13になったばかりの子供
つらいのだろう・・どうしてあげればいいのか
俺には分からない・・何もできない
抱きしめながら頭の中は真っ白になっていたとき、明日香が小さく声を出す
「あきちゃん・・」
「ん?」
「明日香ね」
「あきちゃんのことが・・好き」
「あ、あぁ、俺も明日香が好きだよ」
「・・そうじゃなくて、お、男の人として・・好きなの」
ドクンと心臓が鼓動した
「え?」
「明日香ね、小さい頃から、あきちゃんのことが好きだった・・男子とか全然好きじゃなくて、ずっと、あきちゃんが好きだった」
「いや、でも・・」
「前に泊まりにきたでしょ?」
「あぁ、小学のときな」
「うん、あの頃、マンガとかでね、恋とか、そういうのを知ったんだけど・・いつも明日香が思ってた気持ちって・・あきちゃんが好きって気持ちって・・恋?、なんだって思ったの」
「いや、それは、明日香くらいのコが、先生とかアイドルに初恋するのと同じようなもんだろ・・」
「違うもん!、明日香の気持ち、そんなのじゃないもん」
強い目で訴えかける
「・・に、2年前・・明日香泊まりに来た時、あ、あきちゃんと・・そ、そういう仲に、そういう仲になりたくてきてたんだよ・・でも言えなくて・・」
そういう仲?、心臓がバクバクと脈打つのを必死で抑える
「いや、でも・・明日香はその・・姪っこだし・・そういう仲って・・」
「あ、明日香は・・あきちゃんに・・キ、キスとか・・それ以上のこととか・・して欲しかった」
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