第17話
リビングと寝室の間には、一応の壁はあるものの、扉はなく、ほとんど境がない
寝室用の照明もあるが、全く使わないので、リビングの照明を消すと、発光する大きな壁掛け時計だけが唯一の光で、家具や壁を薄っすらと照らす
さすがに、そばにいる明日香は見えるが、それでも薄暗く、表情までは読み取れない
肩を押すと、うんとだけ言い、真っ直ぐにベッドに向かう
掛布団をめくり、奥に寝ると、続けて明日香も潜り込み、布団を体にかけた
少し大きめだが、二人で使うには小さい枕の両端にお互いの頭を乗せ、微かに見える天井を垂直に見ていた
「あきちゃん」
「ん?」
「枕、小さいね」
「あ、あぁ、一人用だからな」と当たり前のこと言う
「・・あ、あのね」
「あ、あぁ・・」
「も、もう少し、よ、寄っていい?」
「あ、あぁ・・」
明日香が近づき、肩が触れたので、少し奥にズレると、俺の頭は、ほとんど枕にかからない状況となった
「それじゃあ、あきちゃんが飛び出ちゃうよ・・もっとこっちで・・」
何度やっても二人の頭がしっくりと収まることはなかったところ、明日香が徐ろに上半身を少し起こし、俺の腕を掴み、自分の頭の下に持っていき、その腕に頭を置いた
「え?」と戸惑う俺のほうに体を寄せ「こ、これならちょうどいいね」
「あ、いや・・でも・・」
「・・あったかい」
体と直角に伸ばした腕をどうしていいか分からず、指先を硬直させていた
それに気づいたのか、何なのか分からないが、明日香はその手を掴み、自分の肩に乗せた
自ずと抱きしめるような形になり、明日香は俺の腕の中にすっぽりと収まっている
「どうした、今日は?、学校で何かあったのか?」
黙ったまま小さく首を振る
何かイヤなことでもあったのかと、先ほどのことなど棚に上げて、親心を出し、もう一方の腕も回してギュッと抱きしめてやった
そのうち眠りにつくだろうと静かに見守っていてやると、小さく囁いた
「眠れないね」
「そうだな・・」
「ねぇ、あきちゃんって何で結婚しないの?」
「こればっかりは、縁だしな・・、特に理由なんかないな」
「彼女とかいないの」
「あぁ、いないな、残念ながら」と笑いかける
この距離だと、さすがに明日香の表情も分かるが、なぜか、さっきよりも明るく見える
「でも、前はいたんでしょ」
「まぁ、そりゃあ何度かは」
「そっか、そうだよね・・いいな・・付き合うとかって・・」
「明日香もそのうちできるよ、明日香のこと好きな奴が現れるって、出来ないことなんかないよ」
「・・でも、怖い・・、もし、明日香に好きな人が出来て告白しても、きっと振られると思う」
胸に顔を埋めてきた
「ってことは、誰か好きな男がいるんじゃないのか本当は?」と意地悪そうにおどけた声で問いかけるが明日香は何の反応もない」
「あのさ・・あきちゃんは・・彼女がいた時・・あの・・△◎□◯▽?」
「えっ?、何て?」
「えっ、エッチとか、してた?」
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