昼間由紀が自室のタンスから何かを出していた。「何してるの?」と声をかけると「あぁコレ?…浴衣出してるの」と答えた。「何で浴衣を?」「明日この近くでお祭りがあるのよ…昔一緒に行ったの忘れた?」「あぁ…そう言えば行ったね」俺はあまり覚えてはいなかったが由紀に手を引かれ、賑やかな神社の参道を通った記憶だけあった。「あそこの祭りまだやってるんだ?」「うん…昔より規模が小さくなったけどね…」由紀は少し寂しそうな顔をして言った。そこに昔から住んでいる人にとって祭り等のイベントが、無くなる事は寂しいだろうなと俺は思った。俺の地元でも「ウルサい」って理由でイベントが無くなったから、由紀の気持ちが痛い程分かった。「明日一緒に浴衣着て行こうね…」「うん…そうだね」そう言ってから由紀は二着の浴衣を専用のハンガーに掛けて陰干しした。「俺着付け出来ないけど?」「それは大丈夫よ…私がしてあげるから」と笑顔で言った。「へぇ…着付け出来るんだ?」「うん…昔おばあちゃんに教えてもらったから」と言った。
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