先生の後についてエレベーターに乗り込んで8階まで上がった。
ドアが開くと長い廊下がズズーっと続いていて、下を覗くと人が小さく見える。
「高けぇ…」
→そう?部屋は806号だから真ん中くらいよ
「ほーい」
風になびく髪を眺めながら先生の後ろを歩いていき、部屋の前に着いた。
野口小百合
「先生って小百合って名前なんだ?」
→え?知らなかったの?……まぁいいわ。ホントは表札出したくないんだけど、自治会で決まってるからね…
「ん?なんで出したくないの?」
→この歳でひとり暮らししてますって公言してる様なものじゃない…イヤよ
「ふーん」
玄関ドアを開けると車と同じく玄関にも、その先の廊下にも何も物がない。
部屋にあがってリビングへ入っても、ホントに最低限の家具や荷物しかないみたいだった。
「なんか…めっちゃスッキリしてる。先生って物少ないっすね?」
→独身女は死んだら片付けしてくれる人がいないのよ。ごちゃごちゃした私物を他人にいろいろ見られたくないから物を置かないの。………まぁこれもどーでもいい話よねあなたには。
「なんかさっきからまた先生イライラさせちゃってます…?」
→…………違うの…恥ずかしいの。部屋に人呼ぶなんてずっとなかったから……
「そーなんですか?男とか呼ばないんですか?」
→家に呼んだ事はないわよ。
「あ、ホテルか!」
→そうね…
「オレもホテル行ってみたかったなぁー」
→私が捕まるわよ……。何か飲む?
「シュワシュワ系ならなんでもいいでーす」
→わかった。じゃそこに座って待ってて。
2人掛けのソファに座って部屋をまた見回すが、リビングはソファ、テーブル、小さめのテレビと横にPC、ダイニングは籐の物入れと掃除ロボットだけ。
リビングと並んだ和室には、普段持っているバッグが置いてあるだけだった。
→ジロジロ見ないの!
「えー。見るほど物ないしー」
→……まぁそうね。
「いただきまーす!」
細いグラスに入ったコーラを口に運ぶと、先生はテーブルに自分のグラスを置いてそのまま床に座り込んだ。
「ん?ソファ一緒に座らないんですか?空けてあるのに」
→だからぁ……恥ずかしいのっ!そーじゃなくてもこの後…………するってんだから……
「あー……」
→なに!?
「先生も楽しみにしてくれてました??オレ今日まで楽しみでドキドキしてました!変体しちゃったらやだなーとかも思ったり」
→私は………楽しみってより…がっかりさせないようにって事ばっかり考えてたわ…
「どゆことですか??」
→45にもなるとね、身体のメンテナンスも疎かになってくるのよ…。いろんなとこにお肉付いたり…毛も…
「えっと…つまり…?」
→こんなババアと楽しくセックスしたいなんて言ってくれるあなたに…弛んだ身体とかワキの毛とか見られたくないじゃない。サボってた分取り戻すのに必死だったの!
「……ダイエットしてたってことですか?オレのために??」
→2キロしか痩せなかったけどね…。
「毛は?」
→エステ!気持ち変えるならまず見た目変えようと思って頑張ってたの!……だから…
「1ヶ月以上かかったって事ですかー」
→……そう…。
「なんかーすっげぇ嬉しいかもー!オレの為にー……」
→あなたみたいな若い子に求められるのと脂ぎったおじさんとじゃ比べるものでもないけど…やっぱりね、それだけでも嬉しいもんよね
「じゃもーしませんか?オレ先生と早くやりたい!」
→………ストレートねやっぱり…
「ダメですか?」
→ううん……いいけど…。でもひとつお願いがあるの
「なんですか?」
→ゆっくり…ゆっくり進めてくれる?あなたと明日香さんみたいにすぐに入れてすぐに出して…とかじゃなくて、その…私の身体が準備できるまで…時間をかけて
「あんまりしたことないけど、でも言ってくれればそーします!して欲しい事言ってもらえたら」
→…ありがと。じゃあ…10分したら寝室に来てくれる?廊下の真ん中のドアが寝室だから…
「オッケーでーす!」
→うん…じゃ
※元投稿はこちら >>