仕事にも慣れてきて
だんだんと欲が出てきてしまう
もっとたくさんの写真を撮りたいと
モデルさんや動物だけじゃなく
世界を、たくさんの人々を
撮りたいなって……思った
しばらく町の美味しいパン屋さんの記事を書くために取材を取りに行っていた
今日は姉さんが一人で取材に行ったが
姉さんの帰りが遅いので迎えにきた
姉さんを車に乗せて帰路へ
うーむ、悪びれもなくニコニコしてる
「なんかあったの?」
「んー、じんめいきゅーじょってやつさぁ」
「ふにゃふにゃして、だらしない」
「ひゃああ///」
ほっぺたをつねってやる
姉さんかわいいな……
いくつになっても年齢不詳だ
見た目め……中身も
「瑞希くん、いま失礼な事考えてるでしょ?」
「いえ、まったく♪」
帰宅して二人で食事を作る準備
もうすっかり夫婦だな
エプロンをつけていると
背中に重みを感じた
年齢が何か言いたげな顔で薄く目を見開いている
ドキッとする
慣れてるつもりだけどやっぱり綺麗な人で
なんな神秘的な目をしてる人……
「瑞希くん……」
「ん……」
「赤ちゃん作ろう」
「は?え?え?」
「瑞希くんの赤ちゃんほしい」
「ね、姉さん?」
「それがダメならさ……一旦離れてみようか?」
「姉さん!ちょっと!」
姉さんは真面目な顔
ソファに座らせて手を握る
「えっと、姉さん……どうしたの?」
「このままじゃ私たちは何も残せない……嫌でしょ?」
「……」
二人は姉弟だから……できる事は限られる
「今、瑞希くん、悩んでるでしょ?」
「え?」
「世界を回って仕事をしたいんでしょ?」
「ん……」
僕は頷いた
姉さんは微笑んだ
この人には何もかも筒抜けか
姉さんが僕の胸に顔を埋めてきた
「西野くんにさ、聞かれた」
「え?」
「子供、ほしくないんですかって....」
「西野さんが……」
「私、欲しいって言っちゃった....そしたらね、協力してくれるって」
「え?どうやって……」
姉さんは僕を見つめた
涙ぐんでいる
「西野くんと結婚するの」
それを、聞いて、理解した
西野さんと結婚してる間に、僕が姉さんを妊娠させる、生まれれば法的には夫婦の子……でも本当は僕と姉さんの子
そうすれば……できる
周りの人にも悟られずに
でも……でも
「私は瑞希くんが帰ってくるまで西野くんの妻として生活する」
「どう……するの?その後は?」
「西野くんと離婚して瑞希くんと二人で暮らす」
「そんなのダメだよ……西野さんがかわいそう」
「話は彼から聞けばいい」
姉さんも悩んで考えたようだ
涙がこぼれ落ちている
姉さんを落ちつかせて
西野さんに電話をかけた
「はいはい、どうした?」
「西野さん、姉さんから聞きました」
「あー、うん」
「何を考えてるんですか!」
「え?」
思わず怒鳴ってしまった
落ちつけ、僕……
「西野さんの幸せを利用するような事、できません」
「いや、あのさ……いいんだよ」
「え?」
「俺さ、最近分かったんだけど子供残せない体だったんだ」
「え。」
言葉が出ない……
「友人に何人かそういう人がいてね、お前も検査しとけって言われてさ。やっみたら、そんな体だった」
「.....」
「俺はある程度歳をとって悟ったよ。脇役でも幸せだって」
「...でも、姉さんの事……」
「愛してるよ、だからできる」
「...」
「最初、協力するよって言ったら彩花に怒られたよ、めちゃくちゃ。
でも俺は俺なりの考えを伝えたよ」
「西野さんを犠牲にするなんて」
「俺は彼女の笑顔がみたい。それに俺だってちゃんと報酬はもらうよ?彩花と数年新婚生活はさせてもらう」
「……」
「途中で気が変わるか不安?まぁ、正直自信はないけど……彩花に全権を委ねるよう結婚前に手配しておく」
「……」
「彩花はね、君の事が本当に大好きなんだよ、だから君の子供が欲しいんだ」
「僕……」
「君には君の夢があるんだろう?」
「あ。」
「彩花から聞いたよ。感は鋭い子だからね……当たってるんでしょう?」
「はい……」
「かなりキビシイ判断だけど、君が決めな、男だろ」
「....はい!」
「また、明日な!」
電話を切って
その場に立ち尽くし
悩んだ
色んな事
そして、姉さんの所に戻った
姉さんは涙目で僕を見つめている
愛しい人、大事な人……
そっと頬に触れキスをした
長い長いキスの後、姉さんを見つめて言った
「僕も欲しいよ」
「瑞希くん……」
「子供、作ろっか」
姉さんが笑った
すごくすごく、嬉しそうに
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