静かに俺の腕を身体から離した母は、ゴソゴソとブラの位置を直し小銭入れを握りしめ
「飲み物…買ってくるね」
と勢いよく立ち上がったり
ゴン! と天井に頭をぶつた。
「いっ た~い」
ずっと俺に背中を向けたまま、やがて小走りで販売機へと向かった。
助手席で母の感触を思い出すように手を見つめてると
「はいっ コーヒー」
冷たい缶を頬に押し付けられた。
甘ったるいカフェオレを二口飲んだ
「ちょっと、ちょうだい」
俺の手から缶を奪い、一口、飲んだ。
俺が口をつけた場所に母の唇がつき、滑らかな喉が動く。
「あっ ま~い」
顔をしかめながら、俺に手渡すと、自分の缶を開け ゴクリ と飲む。
母はいつもブラックコーヒー
「…ブラックコーヒー?」
「そうよ おいしいわよ」
「ちょっと ちょうだい」
「いいわよ はい」
母から手渡されたブラックコーヒーをホルダーに置き
母の唇に俺の唇を重ねた。
母は息を飲んだ
味を確かめるように母の唇を少し舐めてから
「…甘いね」
と言って唇を離した。
助手席に深く腰かけ
自分の唇をそっと舐めて、母の香りを味わった。
帰りの途中、母のブラックコーヒーを飲んでみた。
「にがっ!」
思わず呟く俺に、母が指を1本立てて言った。
「当たり前でしょ!それが…大人の あ・じ・よ♪」
家のベッドにゴロンとなり今日の事を考えていた。
下からは アハハハハ と姉の笑い声が聞こえる。
程なく父も帰宅し、談笑するざわめきの中、時折 姉の アハハハハ と笑う声だけがハッキリと聞こえてくる。
ドンドンドン と姉が階段を上ってきて部屋に入り、すぐに ドンドンドン と降りて行った。
カコーン と風呂場で響く音がする。
姉が風呂に入ったみたいだ。
不意にドアがノックされ
「入ってもいい」
と母が声をかけてきた。
返事をしてから、しばらく間を空けて母が入ってきた。
「プリン!おいしいの♪」
嬉しそうにプリンを眺めながらテーブルに置きチョコンと座る。
嬉しそうに俺を見て
「おいしいのぉ~♪」
とプリンを催促してくる。
そんな おいしいプリンを食べてると、母が
「さっきは…なんか…ゴメンね」
と照れ臭そうに言った。
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