・・・眼が覚めた
気を失っていた?
・・・真理亜
あいつ・・・バケモノだ
ここ、どこ?
俺の客室?
なんで?
「ぼっちゃま」
「へ?中津?」
「お加減は?」
「中津!やばいよ!真理亜はバケモノだよ!」
「・・・・・」
中津が何も言わずにハーブティーを入れる
いい香りだけど
今はそれを楽しむ気分じゃない
「中津!中津!」
「ぼっちゃま、真理亜様とゆっくりお話ください」
「いやだ!行くな!怖い!」
「ぼっちゃま・・」
抱き締められて
背中を撫でられた
「行くな」
「どこにも行きません」
「怖い・・怖い・・」
「私がいます」
彩花にこんな醜態見せられない
絶対に・・・・
コンコンとドアがノックされる
「あの・・」
真理亜だ
振り向いた瞬間の顔がフラッシュバックする
「来るな!バケモノ!」
「そう言われると覚悟はしていました。お兄様」
「う・・・」
中津に抱きつく
怖い・・・こんなに恐怖を感じたのは初めてだ
「お兄様、私はバケモノかもしれません」
「・・・しゃべるな」
「でもバケモノはバケモノからしか産まれません」
「・・・どういう意味だ」
「貴方はずいぶん母や父に幻想を抱いているようですね」
「そんな事・・・」
「両親がどうしてここ長く住んでいたか分かります?おじ様に追放や投獄されたに等しい扱いです」
「は・・・」
真理亜は瞳を閉じた
「お母様もお父様もまるで躾のできていない子供のようでした。大人の皮を被った幼児です」
真理亜は拳をにぎる
「どうして私を選んだか分かりますか?」
「お前を愛してたから?」
「娘はいざとなれば売れるからです。体に価値があるから、金になるからです。別の家に嫁がせれば寄生もできるから」
「は・・・?」
「私はそうして母と父と一緒にここで暮らす事を強いられました。どうして誰も止めて救ってくれなかったんだろうって周りを恨むこともありました」
真理亜は俺をにらむ
「私はお兄様が羨ましい」
「なん・・・で?」
「あんなバケモノの近くで育つ事が無かった貴方が羨ましい」
「うそだ・・母親は愛をくれるものだろ?父親は守ってくれるものだろ?」
真理亜は冷たい眼をした
「毎夜、男を、女を連れ込んで淫らな楽しみに浸る両親は私にそんな物を与えてくれた事など一度もなかった」
彩花に言われた事が
頭をよぎった
「それでも・・・私はここが好きです。離れるつもりはありません。外界に出るよりもずっと幸せ」
真理亜がキツく俺を睨んだ
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