昔・・・サーカスに行った事を覚えてる
ピエロがボールの上に乗って曲芸を披露していた
観客全員の視線を集めながら・・・
俺はピエロが羨ましいと思った
芸よりもその愛らしいメイクや仕草のピエロを観客は見ている
ちゃんと自分を見てくれているんだって事をピエロも嬉しく思っているんだろう
俺もちゃんと見られたい
見られたい
誰かの眼を奪う存在になりたい
いつまでも瞳に写る存在になりたい
そう思うようになった
あるパーティの時
俺と同年代の子供はみんな親がいた
俺よりも金はないけど
親がいる
嬉しそうに笑ってる
悔しいとかそういう感情はなく・・・
ただなんとなく
奪ってやりたいって思った
会場の隅にあるピアノに目が行った
すぐに近づいて。俺は習っていたピアノを演奏した
演奏が始まると
みんなが俺を見た
眼はみんな俺のもの
拍手もしてくれた
ものすごい快感と幸福感
俺はこれがクセになった
人生はひとつのステージ
俺はパフォーマーで・・・
視線はすべて俺のもの・・・
「あ、この花かわいい」
彩花が写真をとっている
かわいい奴め
はやく嫁にしたいな
妹・・・真理亜
着物がすごく似合う
可憐な美少女
・・・なんだろう、この嫉妬みたいな感情は
むかつく・・・
「お兄様」
「ん?」
「会いたかった」
「あ、うん・・・」
近寄る妹
抱きついてきた
「・・・感動の再開っ」
彩花が一枚写真をとった
真理亜が俺の胸に顔をうずめる
双子の兄妹って事は二卵性・・・
背も違う・・顔はそっくりだけど髪色は違う
「お兄様・・・」
顔をあげた彼女は
まっすぐ俺だけを見ていた
すこし涙をこぼして微笑む
美しい彼女
ドキッとして
離れた
「し、使用人とかいないの?」
「いますよ。長年ここに使えてくださってる方が」
「ふ、ふーん」
宿泊用の客室のベットに倒れこんだ
「いいシーツだ・・・」
「ぼっちゃま」
「ん?」
中津が荷物を運んできた
「おじ様からの伝言です。仲良くするように、真理亜様は・・・大切な孫だから傷つける事のないようにと」
「・・・なんで?」
「はい?」
「・・・ジジイの土地だよね?なんでいるの?なんで俺の親は失踪したの?」
「・・・・」
中津は黙った
「・・・失踪したのではなく。この土地でずっと暮らしていたそうです」
「なんで?なんで俺だけ置いてったの?」
「ぼっちゃま」
中津に抱き締められた
涙が流れてた
俺・・・
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