東洋英和の坂道を下りきると、前方には六本木の不夜城の繁華街が一気に広がった。おびただしいネオンと渋滞した車と行き交う人達の群れ。
日本人より、外国人が多いかもしれない。一方、男女のカップルは、意外と少数派だ。四五人連れで徒党を組んで歩く人相の悪い若い男達が、目立つ。これが一頃、市川海老蔵で話題になった半ぐれの連中だろうか。なるべく、避けるようにして歩いた。
やはり、六本木って凄すぎるわね。華やかだし、怖い気もするし。
物珍し気に、母が周囲や行き交う人達にキョロキョロと目を動かす。
あっ。麻布交番だ。ホテルは、二つ目の裏道から直ぐだから近いよ。と私。
もうじき7時になるわね。ホテルに入る前に、食事とらなきゃね。少しぶらっとして、食事してからチェックインしようか?
母が、腕時計で時間を確かめながら言った。そしてニッコリ私を見て、そのまま腕を絡めてきた。
来て良かったわ。お世話になった方々への義理も果たせたし。私の可愛い可愛い息子とも、こうやってコミュニケーションを深められたし。ねっ寛司さん?
同調を求めるように私を見たので、母の腰の括れに手を回して、それに答えた。
うーん。母さんからすると息子の俺ってそんなに可愛い存在なのかな?正直、姉さんとどっちが可愛いの?
親子の間で、普段は照れて出来ないような話が、スムーズに口をつくのはヤハリこの街の持つ日本人離れした独特のムードの成せる技であろうか?
そう、二人とも可愛いんだけど。可愛いさの種類が違うっていうのかな。貴方がしたいと思うこと、何でもしてあげたい、させてあげたいって感じかな?
又、頭の中を妄想が駆け巡る。ヤバいよ!何でもしてあげたい!にプラス何でもさせてあげたいって。母さんの言い回し。凄く卑猥過ぎるんじゃない。それってもしかして諸に、今夜これから○○○させてくれるってこと?先っぽからジワジワとスケベな我慢汁が滲み出て来た。
そうこうしてると、急速に人通りが途絶えた。六本木の繁華街は、それほど広くないようだ。丼ものが好きな母の提案で吉野家に入る。店員は、全員、インド人かバングラデシュ人風。
明日は、いよいよ入社式だから、今夜はこれで精力つけないとね。
母が、意味深に、生卵を私の牛丼大盛に流し込んだ。
※元投稿はこちら >>