渋谷駅前の交差点に、二人降り立った瞬間、天文学的な混雑に、すかさず母が悲鳴をあげた。私も、日曜日の渋谷ということを忘れていたのは、迂闊だった。
うわっ、人が多すぎる。私ここじゃ絶対無理。
じゃあ母さん引き返そう。井の頭・京王線ルートで調布迄行っちゃう!
左右前後人に挟まれて、身動き出来なくなった母の体を守るようにしっかり抱き締めながら、移動、脱出した。
途中、頼りがいのある息子だこと。と私の耳元で囁く声がした。
さあ、本題!母さんのこれから話すことを、良く聞いてね。
井の頭線のつり革に掴まりながら母のレクチュアが始まった。
貴方は知らない人だけど。調布の○○さんって、実は、親戚じゃなくてパパの大学時代の先輩。で、今は都市銀行の役員。
ごめんなさい!貴方には、一言も言ってなかったんだけど。貴方の就職先は、この人の口利きで決まったのよ。
母の話ぶりは、真剣そのもの。私は、母の唇に程よく施された口紅を見ているしかなかった。
だから、まずは、貴方の方から○○さんに、きちんと体裁良くお礼をしなければいけないの。
母が、ふーうとため息をつく。
御礼の言葉は、ちゃんと考えとくのよ。
うわあ。早く言ってほしかったな。明日の入社式に加えてダブルで、気が重いなあ。自己紹介の下書きも未完成。
そうか縁故入社かあ。そうだろうな、うすうす実力では無理と思っていた。中堅企業だけど新宿三井ビルだし。学生の人気は、高かっからだ。
母が、心配そうに、私を覗き込む。
あんまり早く言うと、気が小さい貴方が、挨拶に行かないって駄々こねると思ったのよ。
後ろを振り返ると座席が空いた。二人早速座る。暫く二人とも無言。東横線での母が口説かれた話が懐かしい。
暫くして。母が、横から私をつついた。
それでね。もう1つ!今後年一回を目処に、お中元時のご挨拶をすることになったの。パパが○○さんにお約束したみたい。貴方の勤務状況のご報告を兼ねて。
うわあ。大変そう!
うなだれる私に、母が、慰めるように言った。
貴方さえ良ければ、私が来てあげる。
えっ来てくれるの。有難う母さん。
間も無く調布に着くアナウンスが、聞こえて来た。そのアナウンスを聞きながら再度、母子相姦の妄想にふけっていた。
そうか、母さんとやりたいんな。早く風呂つきのマンションを借りて、母さんの熟した肉体を堪能したいなあ。
あらどうしたの。ニヤニヤしちゃって。気持ちわるいわね。
調布駅のホームに降り立ちながら、母に宣言した。
恩人だからしっかり御礼をするから大丈夫だよ。
うわあ安心した。ほらこれ見て。
ブランド物のボストンバックから、高価そうな明太子を取り出して、母がニコッと笑った。
線路沿いに歩いて15分だって。白い豪邸らしいよ。
改札を左側に出て、二人歩く。
母さんね。実は、貴方の性格弱いから、就職は無理かもってずっと前から心配してたのよ。でも、いつの間にか大人の男に成長してくれたようで、嬉しいわあ。
母さん綺麗だよ!美し過ぎる!ヤバい、俺、母さんに恋しそうだ。母を口説いたあの若い会社員の気持ちがわかる。
今夜一段落したらそれとなく確認しようと思ってるんだが。母と若い男は、間違いなくオメコしているはずだ。
※元投稿はこちら >>