大木のある平地の周りに村がある
今日はそこに訪れた
「先生、荷物持ちますよ」
「ううん、へーきだよ」
「そうですか、重かったら言ってください」
まぁ、いつだってシャッターは押せるけど
なんだか撮る気がおきてこない
私の好奇心とかが満たされてないといいますか
もうすこしあの大木にドラマがある気がしてならない
ある一件のお宅にお邪魔する
品のいいおばあさんが一人で暮らしている
「お茶を用意するわね」
ありがたい・・・
変な客人で申し訳ありませんなぁ・・
椅子に座って話を聞いた
「あの大木について何か昔話はありませんか?」
「んー、そうね・・・・いっぱいありすぎて何を話していいのかしらね・・・」
いっぱいあるのか・・・やはり
どの本を読んでも話が本によって話しが違うのだ
「じゃあ・・・私の一番好きなお話を・・」
おばあさんは微笑んで話しをはじめた
大きな木の近くに小さなお城がありました
この辺りの領地を納める貴族の娘が住んでいました
姫は絶世の美女でしたが、姫は結婚せず、近くにワイン農場をたててしずかに暮らしていました
城には姫の実の弟も暮らしていました
弟はワインの商人として名が知れていていました
彼も美男でたくさん言い寄られていたのに結婚はしていませんでした
城に使える人々は疑問に思っていました
ある日、一人の召し使いの少女が見てしまったのです
姫と弟が愛し合っている姿を
彼らは恋仲だったのです
少女は周りの大人に話してしまいました
少女はそれが禁忌だと知らなかったから
噂は広まり、城中に、そして姫の父親の耳にまで
姫の父は怒り狂い
二人を引き離そうとしました
姫は弟と離れる事など考えられなかったのです
弟も同じでした
姫と弟は城に火をつけ、焼き払いました
ただ、城の人々はうまく退けさせた後
二人は燃える城を見て
もう未来はないと
生きてはいけないと悟りました
二人は大木に寄りかかり、二人で育てたワインを全身に浴び、飲み、愛し合い
二人で毒を口にふくみました
最後にこう誓い合いました
「どうか、来世も姉弟で生まれてきましょう」
と・・・
他人ではなく、姉弟で
二人は心中した後
墓を立てられる事もなく
静かに葬られました
おばあさんは紅茶を一口飲んで、照れ笑いをした
「変な昔話が好きでごめんなさいね、最後他人より姉弟で生まれ変わる事を望む所が好きでね・・」
私もそう感じてしまった
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