色々と母さんの生い立ちを聞いた
母さんは家の事情で幼い頃に養子に出された事
若い頃は画家を目刺しつつ勉強も手を抜かずにちゃんとした所就職した事
桂さんとの事も
「あの人に似てたから好きになったって・・・言ってたよ」
「そうなんですか・・・」
「・・・・2年前に姉さんが来たんだ、君との事は大体知ってる」
「う・・・・」
「ごめんね・・・妹として何か止められるんじゃないかと思ったんだけど・・・姉さんに釘をさされたんだ[瑞希との事を邪魔するやつは遠慮なくころすから、誰だろうと]って」
母さんは・・・狂ったんだ
絵からあの人が会いに来てくれただなんて・・・
そんなの・・・
「その時渡されたんだけど、姉さんから預かってるものがある・・・姉さんも正気に戻る時があってその時に書いたものかも」
また手紙・・・
封筒を開けた
[瑞希へ
愛に狂う母を許してください
貴方を貴方として愛してあげられなくてごめんなさい
貴方はあの人じゃない
時おり、そんな当たり前の事を思い出してはかき消すように貴方の体を愛撫してしまう
もう止まらないの
とりつかれたように貴方を、あの人として愛してしまう
瑞希、彩花、ごめんなさい
私の娘、息子として愛してあげられなくてごめんなさい
私はまた狂う
愛に狂う
あの人を愛する時
母ではなく、幻想を諦められない幼児になる
ごめんなさい
貴方たちへの償いはお金でも言葉でも償いきれない
ごめんなさい
狂う母を許して
ごめんなさい
母より]
いつもと違う乱雑で何を言いたいのか分からない文章
ひどく汚い字
母さんらしくない
僕は手紙を封筒に戻しかばんに入れた
「江里さん・・・せっかくだし美術館を案内してください」
「あ、うん・・・」
親戚の叔母さんになるのか
遺産ってこの手紙の事だったのかな・・・
美術館をまわり終えて
休憩室の椅子に座りこむ
体はひどく疲労している
母さんの事はやっぱり理解できない
けど・・・過去を知れてよかった
この事は姉さんには内緒にしたほうがいいかな
また心配させる
「また・・来てもいいですか?」
僕がそう言うと江里さんは微笑んだ
「ええ、今度は彩花ちゃんと来てね」
江里さんは母さんに似ている
そりゃ姉妹だし
遺産・・この手紙じゃなくて
江里さんとの出会いかも
親戚と呼べる人ができた・・
色々考えながら僕は帰路についた
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