夏休みに入った
最近は母さんの手紙を何度も読んでは引き出しに戻すの繰り返し・・・
ベットに寝転がり手紙を読む
住所が書いてある
東京都内だから行こうと思えば行けるんだけど
「はぁ・・・」
もやもやしている
行く勇気がなかなか出ない・・・・
母さんの事はまだ忘れられないでいる・・・
目を閉じれば・・・
僕の体を愛しそうに愛撫している顔
「あの人」に似て美しくなったわねって・・・よく言ってた
あの人・・・だれなんだろうか
母さんは僕をどんなふうに育てていくつもりだったんだろうか
「あー!くそ・・・・・行くか!」
身支度をする
姉さんは仕事だからバスで行くか
着替える
初夏だけど長袖を着る
そう育てられたからそうしてしまう
それに・・・半袖はそんなに好きじゃない
汚い物を晒すのを羞じらうような気持ち・・・って言っても理解不能だよね
戸締まりをして玄関に向かう
誰もいないけど
「いってきます」
そう言う
僕の帰る場所はここだから・・・
まだそんなに暑くはないけども
日差しは強いかな
バスを待っている
視線を感じる
僕の容姿はそんなに注目されるほどなのかな・・・
綺麗っていい事なのかな・・・
そんなぐるぐる思考がめぐっているうちにバスが来た
視線から逃げるように乗り込んだ
音楽プレイヤーの電源を入れてイヤホンを耳に押し込む
音楽が好きなわけじゃないけども
じっと座ってるよりはマシ・・・
外の景色を見ながら
だんだんと都心へ向かう
姉さんも今日は都内で仕事があるんだっけ・・・
会えたら・・・いいな、姉さんに
ふぅっとため息をついて
胸がキュッと締まる
姉さんにべったりくっついているのは幸せ
でも母さんにべったりくっつかれるのは何か違和感があった
母さんは僕を見ているようで別のものを見ていた気がした・・・
バスから降りた
あとは歩きだ
スマホのナビを起動した
こっちかな・・・
人とすれ違うたびに視線を感じる
そんなに見ないでほしい
僕はただの高校生だよ・・・
スマホを見ながら目的地を目指す
母さんの遺産
なんなのだろうか
一体・・・・
「目的地周辺です」
そうスマホの音声が告げ案内は終了
目の前には大きな美術館
ここ・・・?
ここになにがあるのだろうか?
手紙の最後にはこう綴られていた
母さんが母親になる前の事を知ってほしい・・・
って・・・
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