すこし遠出をしている
姉さんは一人で行くからいいと言ったが僕も来たかった、見たかった場所
桂さんが運転する車で近づける所まで近づいた
姉さんは車から出るとすぐにカメラを構えた
桂さんはそれを静かに眺めている
「・・・毎年撮りに来てるんだ、彩花は」
「ニュースで見るより・・・胸が痛くなります」
「・・・俺もだ」
一月二日、朝、吐く息は白くなる
姉さんはふうっと大きく息を吐いてそれを眺めた
僕は姉さんに近寄る
「姉さん、どう?」
「うん・・・撮ったし、見た、この目でしっかり」
「・・・復興してる・・のかな?」
「・・・分からない、形的には元に戻るかもしれない」
姉さんはため息をついて僕の頭を撫でた
「もう、みんな忘れかけてる・・・しっかり見なきゃいけない危機があるのに」
「・・・怖いね」
正直にそう思った
目の前にあるそれが怖いんじゃなく
忘れかけている事が
「国によって人の気質が違うのは当たり前だけどね・・・日本は四季の移り変わりが激しいし、季節によって災害も違う、・・・違うことに心移りをする事で忘れ、乗り越えてきたんだよ・・そういう気質だから戦後もここまで復興できた」
姉さんはまたそれをじっと見た
なにか儚いものを見るような目で
「・・・でも、忘れちゃいけない物だよ・・あれは」
「姉さんは日本が嫌いにならない?」
「ううん、大好きだよ・・・・便利で快適でご飯が美味い・・・・でもね」
姉さんはしゃがんでまたカメラを構えた
「それの裏側を知ってる人は少ない・・・」
静かにシャッターを押した
立ち上がって僕を抱き締めた
「いざとなったら瑞希くんと海外逃亡しよっと、、」
「英語しゃべれないよ、、」
「お姉ちゃんが教えてア♪ゲ♪ル♪」
耳元で言われるとゾクっとする
「瑞希くん、帰ろう」
「うん、、」
僕は車に乗る前にもう一度それを見た
大量の電力を作り出す施設
危険な現場で戦っている人々
一歩づつ回復に向かうように見える
僕は忘れない
全国民の喉元にナイフがつきつけられている事を
「ほら、風邪ひくぞ」
桂さんに頭を撫でられた
「あは、、桂さんがお父さんだったらなぁ、、」
桂さんは苦笑した
三人で戻る
住む街へ
家へ
いつ起こるか分からない災害
命は有限だと思えば
姉さんとの時間がとっても大切に思えた
僕は後部座席から
それを見続けた
忘れないように
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