僕は絵本を閉じた
姉さんはポカーンとしている
「幼稚園児が読む絵本じゃないと思う!」
「僕は好きな絵本だもん」
「瑞希くんは物好きだねぇ・・・」
母さんが亡くなってからしばらくたって家の荷物を整理しにきた
いらないものは捨てなければいけない
たくさん出てきた絵本
母さんが昔から読み聞かせてくれた
「姉さんは母さんに絵本を読んでもらった事ある?」
「ん?ないよ」
「そうなんだ・・・」
「私は母さんの気に入る器じゃなかったからね」
姉さんは食器棚から食器皿をとりだした
「ライオンにシマウマの苦しみは分からない、シマウマにもライオンの苦しみは分からない」
「え?」
「瑞希くんの苦労は私には分からない、私の苦労も瑞希くんには分からない」
さっきの絵本みたいに・・・
姉さんだって僕には分からない苦労をしたんだよな
姉さんが食器を段ボール箱に入れて微笑む
「分からなくても一緒にいられるなら幸せなんだよ、シグとアールみたいにね」
「そうだね、姉さん・・」
「大体使えそうなものはまとめられたね」
母さんの使っていたものは何もかも、捨ててしまおう
この家は売りに出すことにした
母さんには両親がいない
きっと母さんも僕には分からない苦労をしたんだろう
けど、僕は分からない
そして僕はここを去る
荷物を車につんだ
業者の人に処分してもらうものもある
「さて、瑞希くん・・・」
「ん?」
姉さんが手を差し出してニコッと笑う
「帰ろっ♪」
「うんっ、、、」
歩いて帰る
もう夜で
空は星が輝いていて
まるで宝石が散らばってるようだ
「私がアールで、シグが瑞希くんだね」
「逆じゃない?姉さん受け身だし」
「いやぁ、、、えっち!、、」
姉さんに背中を叩かれた
そっちの意味でとられちゃったか
「あ、姉さん、流れ星」
「ん!?カメラカメラ・・・」
「ほら、はやく見て!」
「うん・・・わぉ、、、」
いくつか流れて消えていく
僕と姉さんはいつまで一緒にいられるのかな
それは分からないけど
今は二人で同じものを感じたい
僕は強く手をにぎった
姉さんも握り返してきて
僕と姉さんは帰る場所に向かって歩きはじめた
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