やがてシグはたくましく成長し、群れのリーダーになりました
シグは夜空を見上げるたびにアールの事を思い出しました
アールは元気かな
幸せに暮らしているかな
シグは怖い怖いライオンでもアールの事は好きでした
今度会ったら食べるぞと言われましたが、ずっと、また会えたらなと思っていました
ある日
シマウマの群れの一部が集まってなにかをしていました
シグは気になって寄ってみました
シマウマたちが年老いたライオンを後ろ足でかわりばんこに蹴っていました
「こんなやつのせいで!」
「お前なんかしんでしまえ!」
「この世からいなくなれ!」
シマウマたち恨み言葉を言いながらはライオンを蹴っていました
「やめろ!」
シグが叫ぶとシマウマたちが蹴るのをやめました
シグはそのライオンに見覚えがありました
「リーダーである俺が手を下す、お前たちは先に行け」
シマウマたちは先に水のみ場である池に向かいました
年老いたライオンは傷だらけで
もう細い息しかしていませんでした
「アール、久しぶり」
「シグか・・・・?」
「アール、どうしてこんな事になったの?蹴られたくらいでこんな傷にはならないよね?」
アールはごろんと寝転がりました
「ライオンはずっと王でなければいけない、だが若いやつには勝てない・・・もう周りいたやつらは皆、若いやつについていった」
「なぜ・・・?」
「それが定めだ」
シグはアールのそばに座りました
「シグ、お前を食ってやりたいができない・・・だから明日の日がでるまで俺のそばにいろ」
「わかったよ、アール」
シグとアールはまたお話をしました、夜になってきらきら星が輝きだしました
シグが群れのリーダーになった事を聞いてアールは笑いました
「やはりお前はつよいのだな」
「アール・・・怖い事ってこの事だったの?」
「そうさ・・・老いて力がなくなり、仲間に見捨てられ、しんでいく・・・それが怖かった」
「アール、空を見て」
「ん?」
流れ星がひとつふたつ流れていきました
「シグ、きれいだな」
「うん、きれいだね、アール」
アールはうつむいて動かなくなりました
シグは日が昇るとアールのそばから離れました
「アール、さようなら」
群れはすぐ近くまで迎えにきていました
シグはアールの苦しみ悲しみが分かりませんでした
けれども彼の最期、一緒にいられてすこしは悲しみが薄れてくれていればいいなと願いながら
シグは群れへと戻っていきました
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