カルガモの親は子をころす事がある
あんまり知ってる人はいない
いつも親子でならんで泳いでいるけれど
弱い子は生きていけないからころすんだって
それも母親の愛情
僕は学校で部活をしていない
読書部なんてあればいいんだけどなぁ
読書好きはあんまりいない
「瑞希、サッカーしよーぜ」
「あ、うん」
僕みたいな無口なタイプは避けられるもんだと思うんだけど
みんな遊びに誘ってくれる
嬉しいなぁ、友達といると楽しい
授業が終わって図書室で本を読む事にした
よく読む本があってそこに書かれている文字がたまに頭をよぎる
近親相姦
血縁とする性行為
僕と母さんのしてる事
世間的にはタブー
あってはならない事
「はぁ・・・」
ため息をついて棚に本を戻す
そろそろ帰ろうかな
夜の校内は薄暗くて、ちょっと怖い
「お、こら・・瑞希君、もう帰宅時間だぞ」
「あ、すみません」
村田先生だ
たまにお昼を一緒に食べたりする
学校一の美人先生だ
でもまだ結婚してないらしい
「はやく帰りなよ」
「はい」
頭をなでなでされた
もう6時かぁ
校門を出た
少し肌寒い
そろそろカーディガン用意したほうがいいかなぁ
「ぐてんもーげーん」
「・・・僕のストーカーですか?」
彩花さん・・・僕を待っていたようだ
「ドイツ語ですか?使い方違いません?」
「うん、わかってる」
「なんですか、また」
彩花さんはいきなり僕の手をつかんだ
「君・・・ちょっとおいで」
「誘拐?」
「しようかな」
「・・・少しくらいならいいですよ」
「承知しちゃうんかいな・・・」
手を引かれて
なんとなくあの記憶の人と彩花さんがダブって見えた
街の中を歩いた
どこに連れてく気だろうか
彩花さんはもくもくと歩く
「君、名前は?」
「堺瑞希」
「ん・・・・瑞希くんね」
「あの・・・どこに連れてく気ですか?」
「わかんない」
彩花さんが僕を掴む力が強くなった
「帰らないと・・・母さんが」
「なんか帰したくない」
彩花さんは僕の方を向いた
手は握ったまま
「帰したくない、君を」
「犯罪しちゃっていいんですか?」
「・・・・君は帰りたいの?」
「あの・・・」
「ん?」
「連れていってくれますか?ここじゃないどこかに・・・・」
真剣に、彼女の目を見た
たぶん久しぶりに言った
僕の素直な気持ちを
「私が、君を・・・」
「みずきぃいいい!!!」
会話が遮られた
道路の向こう側に
母さんがいた
彩花さんが危ない
・・・・・逃げなきゃいけない
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