会話、どうしたらいいんだろうか
すでに一時間ほどたったけど桂さんは無言でコーヒーを10杯ほど飲んだ
「あ、あの」
「・・・・・・ん?」
「コーヒー飲みすぎで苦しくないですか?」
「・・・・・・若干」
「甘いものでも注文しましょうか?」
「・・・・・・・この顔でケーキとか注文できん、助かる」
あぁ、強面だしなぁ
ケーキを注文して桂さんに差し出した
一口食べてちょっと安心したようだ
「・・・・桂さんは姉さんと長い付き合いなんですか?」
桂さんはコーヒーを飲んで少し間をおいてから
「・・・あぁ、大分長いな」
「桂さんは何歳でしたっけ?」
「・・・43歳だよ」
僕の思ってたよりずっと年上だったんだな
「・・・瑞希くんは何歳だっけ?」
「えっと・・・16歳です」
「そうかそうか・・・」
いきなり頭を撫でられた
「えっと・・・姉さん、遅いですね」
「・・・・まぁ、楽しんでるんだろう」
「桂さん、僕は一人で平気ですよ?予定とか大丈夫ですか?」
「・・・・あぁ、特に予定はないし・・・会話が弾まなくてすまないな」
「い、いえ!そんな事ないです!」
桂さんに色々話を聞いた
彩花さんとはプロになる少し前に知り合ったらしい
なんでか分からないけどなつかれてしまったとか
彩花さん、はげ、坊主とか悪態つくけど信頼してるんだろうなぁ
「写真への情熱はすさまじいよ、あの子は」
「お父さんに写真の事を教わったと言ってましたね、あ、性格には僕の父親じゃなくて・・・」
「言わなくていい、わかってるよ」
「・・・・会ったことはありますか?」
「・・・あぁ、何度か」
「お父さんかぁ・・・・僕のお父さんはどこにいるのかなぁ」
僕はホットミルクを一口
桂さんはまたケーキを一口食べた
「・・・瑞希くん」
「はい?」
「親というのは・・・ある意味、子にとって一番影響のある教科書だ」
「教科書・・・?」
「そう、感受性の強い幼少期には・・・その子の人生を左右するくらいに影響力のあるものだ・・・不倫するようなバカな男の背中など見ないほうがいいんだよ、君も歪んでしまう」
「でも・・・・僕は会いたいです」
「瑞希くん・・・」
「僕はどんなに悪い人だったとしても、お父さんにあってみたいんです」
「・・・・そうか」
また頭を撫でられた
なんだろう、口数は少ないけど
落ち着く・・・・
ぴりりっ
電話が鳴る
誰だろうか
「え・・・・母さん?」
桂さんと目が合ってしばらく間があって
「入院中だろ?」
「はい・・・」
電話に出た
聞きなれた猫なで声
「瑞希くん、今から迎えに行くわ」
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