保護者面談の時だけお袋と会う
・・・・怖かった
母の隣に座って先生に呼ばれるまで待つ時間
長く長く、辛い時間
会話はない
遠くで聞こえる生徒のはしゃぎ声、足音
手の震えを抑えるのに必死で
「村田亮太くん、どうぞ」
「は、はいっ」
情けない返事
担任の桐谷真が微笑んで席に座るように言った
「亮太くん、よくやってくれてますよ」
「そうですか」
お袋はただ頷いて返事を返すだけだった
「一人暮らしで親元を離れて暮らしながらこんなにいい成績を残せるなんて素晴らしいお子さんですよ」
真先生・・・俺はあんたの奥さんを玩具にしてるんだよ
素晴らしいお子さんだって?
おかしくて笑っちゃいそう
面談が終わると
お袋は俺を見ず背中を向けた
「せいぜい問題を起こさず生きていきなさい」
怖くて固まったまま
お袋の背中を見送った
なにか言ってやりたかった
追いかけた
お袋は迎えの車に乗る寸前だった
「か、かあさん」
「なんだ?」
「褒めてくれないの?」
「17歳になって子供みたいな事言うな、大人になれ」
車に乗っていってしまった母
俺は拳をにぎりしめたまま
まだ認めてくれないのか
部屋に戻るまでに雨がふってきて
傘を忘れたのに気づかなかった
俺ってなんなのかな?
どうして生きてるのかな?
誰かに認めてほしいのに
びしょ濡れになりながら凍えて吐く息は白くくもる
このまま消えてしまえばいいのかな?
もうすぐマンションにつくけど
部屋には誰もいない
温もりが恋しい
歩は俺となるべく会いたくないと言い出したし
年上のOLのお姉さんは仕事が忙しいって会ってくれないし
もうどこに行けばいいのかな?
誰か助けてくれないかな?
色々回り道をした
学校に戻ろうかな
岬先生を脅せばまた犯せるかも
でもあの人は他人の奥さんだし
俺が求めていい人ではないし
俺、なんであんな事したんだろ?
弱味の写真とって脅すなんてサイテーじゃないか
クズで
死んだほうがいいのかな
公園に来て
遊具の下に子猫がいた
「お前も一人なの?」
猫を撫でようとして
スパッ
手に痛みを感じて引っ込めた
親猫が俺を威嚇している
いいな、お前はお母さんに守ってもらえて
どこに行くでもなく
さまよって
雨はやまなくって
俺はびしょ濡れで
「おい」
誰か呼んだ気がする
きっと気のせい
「おい!」
「え?」
桐谷・・・岬
なんでここにいるの?
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