車の中で封筒を開いた
田口君から俺宛の
・・・命を絶つ前に書いたのだろうか
ものすごくきれいな字で書いてある
【部長へ、本当にお世話になりました。俺はようやく自分がしたい事を見つけられるようになって凄く凄く生きる事に希望が持てるようになりました。嬉しくなって、口がすべって母に趣味を見つけて彼女ができた、と報告した時、その希望は消えました。消したく無かったんです、でも消えました。俺はあの親の人形なんです、許可された物しかしてはいけないんです、小さい頃からそう育てられたせいか【やめなさい】と言われるとできなくなるんです、人形みたいでしょ?
部長、貴方が大好きでした、お父さんのような貴方が大好きでした。お願いです、どうか貴方を親と思って逝かせてください。次、生まれ変われるなら貴方の息子に生まれたいです。どうかどうかお元気で、さようなら、ありがとうございました、お父さん】
手が震えるがなんとか帰宅した
結愛が出迎えてくれた
気づかれないよう振る舞う
「塩撒くね?」
「おう、塩漬けにして保存食にしてくれてもよい」
「バカ・・・はは、変なおとうさん」
結愛が背中にぱっぱと塩を撒いてくれた
「夕飯はおでん作ったよ」
「うむ、ありがとう」
結愛がお皿を用意してくれる
彼を助ける事はできなかったんだろうか
もっと何かできたんじゃないだろうか
親と子の関係は
世間で言われるように良い場合もある、素晴らしいものだと思う
だが・・・ひとつ間違えば奴隷のようだ
俺はしっかり自立できている
寂しさには弱いが
お袋の愛情が今ようやく身に染みた
子に尽くすとおかしくなる
親も子も
依存させるくらいなら噛みついて追い払ったほうがいいのだ
結愛がニコニコしながらおでんを持ってきてくれた
じゃあ・・・俺と結愛は?
依存しているじゃないか・・・このままでは結愛が
「おとうさん」
「ん?な、なんだ?」
「私、いつまでもこうゆう幸せを感じれるならそれでいい」
なんとなく読まれていたようだ
「お互い必要なら・・・一緒にいよう?親子でも」
「結愛・・」
「お父さんは一生私のし・も・べ・・・だよ?」
結愛が抱き締めて背中をさすってくれる
「男ってわかりやすよね」
「しもべは勘弁」
「オヤジギャグ減らすなら考える」
「努力してみる」
「ふふっ、ばぁか♪」
「ははっ!」
今日はなんだかやけに寒いと感じたけど
結愛がいれば暖かい
この暖かみがずっと続きますように・・
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恋人親子