大会が近づくたびに胸の痛みが強くなる
夏休みが終わるころ
歩もいなくなってしまう
そんなの嫌だ
絶対に・・・嫌だ
家に帰ってから俺はなにもする気がおきず
ぼーっと寝ているばかり
最近歩にあってない
会いたいけど会えない
顔を見るとつらくなる
会えなくなるのは嫌だ
「亮太くん、夏ばて?」
「・・・・母さん」
「ん?」
「歩が・・引っ越しちゃう」
母さんは俺の頭をやさしく撫でた
「・・・だったら、たくさん思い出を残してあげようよ」
「会うのが・・・つらい」
「亮太ッ!」
母さんが怒鳴った
俺の肩をつかんでジッと目を合わせた
「体は弱くても心は強い子!それが亮太くん!そうでしょ?」
「・・・母さん」
「さぁ、行っておいで?ラジコンの大会があるんでしょ?二人で優勝しなきゃ!」
「・・・うん!」
俺はすぐにいつもの空き地に向かった
歩は一人で車体の調整をしていた
「あ・・・」
「お、おぅ」
「最近・・来ないから・・もう 会えないかと・・」
「な、夏バテてただけだ!おら!練習すっぞ!」
「うん!」
歩の笑顔・・・ずっと見ていたいけど
俺にとってこれが初恋だ
ほんとのほんとに・・・はじめてした恋だ
大会までたくさん練習した
当日はすごく緊張した
朝飯食って気合いをいれた
歩は市民体育館の前で待っていた
「歩、おはよ」
「おはよ・・・」
歩はすこし寂しそうな顔をしている
「歩・・どした?」
「これが終わったら会えなくなる・・・」
「それは仕方ないよ・・」
歩はポロポロと涙をこぼしながら俺をジッと見た
「私・・私・・・わたしね・・・君の事が・・・」
俺は歩の口を手で優しくふさいだ
「その言葉はまだ言わないでくれ」
「亮太・・」
「ようやく下の名前でよんでくれたな」
歩は帽子を深くかぶって涙をぬぐった
「優勝しよう!」
歩の目に光が戻った
「おぅ!やってやろうぜ」
俺は歩と拳を合わせた
人生って叶わない夢だらけだな
歩と手をつないで会場に向かった
※元投稿はこちら >>